事業の仮説を検証し、MVP(Minimum Viable Product: 実用最小限のプロダクト)を開発することは、スケールする事業を構築するための第一歩です。では実際、どのようにしてMVPを開発するべきなのか? 実践的なプロセスについて、シニフィアン共同代表の朝倉祐介がChomp小林CEOに伺いました。
MVPをつくるために一番重要なことは?
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):シリコンバレーや、海外のスタートアップのメソッドを、一生懸命キャッチアップしている起業家は多いと思います。一方で、日本のマーケット環境に合っていないことや、時代感覚として通用しなくなっているメソッドを、間に受けてしまうことも大いにあるのではないでしょうか。その1つに、「MVP(Minimum Viable Product)のつくり方」が挙げられるかと思います。小林さんが考える、「MVPをつくる際に大切なこと」とはなんでしょうか?
小林清剛氏(Chomp株式会社代表取締役CEO。以下、小林):MVPをつくる際に一番重要となるのは、常に何の仮説を検証しているのかを強く意識することだと思います。ここでいう仮説というのは、プロダクトや、前々回にお話しした、「自分だけが信じている何か」のことですが、MVPはこれらを検証するために存在します。
MVPをつくる際に生じるよくあるミスとして、「自分だけが信じている何か」の仮説を検証するために最小単位のプロダクトを作った時に、あまりにも機能が少な過ぎるためにユーザーが離れてしまい、そのプロダクトには価値がないと勘違いしてしまうことがあります。MVPという概念が、単に最初にリリースするプロダクトのことであったり、単一機能のプロダクトのことだと雑に捉えられているケースが多々あるのではないかと思います。
ユーザーにプロダクトを使い続けてもらうためには、例えば、コンシューマープロダクトでも、単に「使って楽しい」というだけではなく、ユーザーが使い続けるほど便利になったり、アイデンティティが蓄積されるという設計が必要になります。これらのどの要素をMVPに含める必要があるかは、プロダクトごとに異なりますが、ユーザーがそのプロダクトの価値を理解できる全ての要素を最低限備えているのがMVPだと考えています。
朝倉:複数の機能があることにより、初めてそのプロダクトの世界観を表現できるものがあるということですね。実際には必要最小限の機能を整えるに至っていないケースが多いということでしょうか?