自分が必要としているプロダクトをつくろう

小林:そうだと思います。初期のプロダクトで失敗してしまう例として、そのプロダクトを本当に必要とするユーザーを探せないままクローズしてしまうことが挙げられます。初期のプロダクトは、そのプロダクトのステージが初期であればあるほど、プロダクトが小さければ小さいほど、必要としてくれるユーザーも少ないはずです。プロダクトが深く刺さるユーザーを探すことは想像以上に大変なことで、あまりに見つからないので、誰も必要としていなかったと勘違いしてしまうことがあります。自分が信じているプロダクトであれば、諦めずに探し続けることが大切です。

また、プロダクトを使ってもいない人から、「この機能があったらいいのに」といったような意見をもらうことは多々あるかと思いますが、そのような意見は参考程度に留めておいたほうがいいでしょう。初期のユーザーターゲットとして、全く当てはまらない人にヒアリングしてしまうと、誰のためのプロダクトなのか分からなくなってしまい、最終的に誰も必要としないプロダクトが出来上がります。また、そのプロダクトを本当に必要としてくれるユーザーも、自分が欲しいものを言語化できているとは限らないので、インタビューをするよりも、プロダクトを実際に使っている様子を観察するほうがいいです。

朝倉:例えば、「自分」だったり、あらかじめユーザーが特定できているプロダクトをきちんと届けるということが重要なポイントなのかもしれませんね。

小林:そうですね。自分や自分の家族、親しい友人、親しい会社などをユーザーにするとわかりやすいと思います。ペルソナなどで、架空の人物をつくる手法に関しては、私は否定的です。架空の人物に喜んでもらうために頑張り続けるというのは難しいですし。

朝倉:原体験は非常に重要ですよね。例えば、僕が今、女性向けのコスメアプリを作ろうとしても、絶対にうまくいかないと思います。自分が欲しいと思っていないものを作ろうとしても難しいでしょう。

小林:プロダクトに関して、「友達だから使ってくれているんじゃないの?」といった声を耳にすることもよくあるのではないかと思いますが、アクティブに使っているユーザーは、明らかに「友達だから」というところを超えて使ってくれています。友達だからという理由で使うユーザーは、多くの場合、短期間でプロダクトを使うのをやめてしまいます。

一方、最初は友達だからという理由で使い始めても、そのまま数カ月間使ってくれるユーザーもいて、彼らからは多くの洞察が得られます。また、何より、自分の友達がプロダクトを使い続けてくれることは、プロダクトをつくり続ける原動力になります。これは実際に経験したらわかると思うので、プロダクトをつくる際には、自分や自分の周りの人が欲しいものをつくることをお薦めします。