アップル、アマゾンが仕入先に「強気に」出る理由

 それではなぜ、アップルもアマゾンもキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮化に積極的なのでしょうか。

 前回記事で述べた通り、キャッシュ・コンバージョン・サイクルは通常はプラスです。本来は運転資金の手当てをしなければなりません。事業規模が大きくなればなるほど、必要となる運転資金も巨額になり資金不足に陥ります。

前回記事:アップルは「10日分の在庫」しか持たない、だから儲かる

 しかし、アップルとアマゾンは、キャッシュ・コンバージョン・サイクルがマイナスですので、「無利息で運用可能な資金が使える」のです。事業規模が大きくなればなるほど、その金額は雪だるま式に大きくなります。

 たっぷり貯まったキャッシュが将来のための研究開発などに使えるので、ますます企業価値は高まっていきます。

 業界での存在感が高まれば、仕入先(サプライヤーや外部業者)との決済条件の交渉で優位に立てます。仕入先としては、「アップルやアマゾンと取引できれば売上アップにつながる」と考えるので、代金の回収期間が長くても致し方なしと、甘受するしかありません。

 また、一般に回収期間が長いと貸し倒れのリスクが高まりますが、アップルやアマゾンほどの企業になればその懸念が少ないため、問題視されません。

 このような背景から、仕入債務回転期間はますます長くなり、キャッシュ・コンバージョン・サイクルがさらに短くなるという、好循環を生み出しているのが、アップルとアマゾンなのです。