スマートスピーカーあなたはスマートフォンやスマートスピーカーなど、使いこなせていますか? Photo:PIXTA

スマートフォンやスマートスピーカー、チャットボットなど、機械が人間に近づき、社会に溶け込むことが当たり前になりつつある。そうした時代において、人は機械とどう共生すべきか。エンジニアとしてマイクロソフト、グーグルで活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、「人が機械に合わせる」ことの重要性を語る。

「人が対応する方が丁寧」「手書きは温かい」
この感覚はもはや幻想になりつつある

 歴史上、機械が人間に近づく取り組みはずっと行われてきました。マン・マシン・インターフェース、あるいはヒューマン・マシン・インターフェースと呼ばれる、人間と機械の間で伝達を行う機器やプログラムが開発し続けられ、人間にとっての機械の使い勝手は格段に向上しています。それでも、まだまだ機械が人間に合わせられていないことを、自分が使いこなせないことの言い訳にして、「コンピューターは分からない」「スマートフォンは分からない」と決めつけ、頑として使おうとしない人もいます。

 以前の連載(「日本企業のアプリには「おもてなし」の心が足りない」)でも取り上げましたが、日本では「おもてなし」という言葉が独り歩きしていて、「機械より人が対応する方が丁寧」という考え方が、いまだに強いようです。しかし機械ではなく、人が対応することの価値とは、一体何でしょうか。

 スマートフォンを当たり前に使いこなすデジタルネーティブや、スマートスピーカーがある暮らしが当たり前のAIネーティブは、今後ますます増えていきます。カスタマーサポートへの連絡は、電話よりもチャットがよいと思う人も増え、人が対話しなければ丁寧ではないという考え方は、既にナンセンスになりつつあります。昭和の感覚を押しつけるのは、本来の「おもてなし」の精神に反するものではないでしょうか。

「手書きの良さ」という幻想についても同じです。手書きの文字の方が温かみがある、という気持ちは理解できなくはありません。ですが、「業務をいかに早く正確に行うか」という場面では、あまり重視すべきことではありません。