大手電力会社で構成する電気事業連合会の会長に九州電力の池辺和弘社長が就任する見通しとなった。九電社長が業界の“顔役”を務めるのは初めて。かつて首相をも動かした電事連のパワーは落ちている。九電は政府や政治家とのパイプが細いため、パワーアップは期待しにくい。それどころか電事連を“解体”する動きも出るのではないかとの懸念の声も上がる。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
東電、関電の“自滅”と暗黙のルールで
九電にお鉢が回ってきた
関西電力役員らが多額の金品を受領した問題を受けて関電の岩根茂樹社長は、大手電力10社で構成する電気事業連合会の会長を就任3カ月あまりで辞任した。ピンチヒッターで中部電力の勝野哲社長の“再登板”が決まった2019年10月18日、九州電力の池辺和弘社長は、電事連が入る東京・大手町の経団連会館にいた。大手電力会社が輪番で担当する定例会見に臨んでいたのだ。
記者から、電事連会長に就任する可能性について尋ねられた池辺氏は、「将来的な選択肢の一つ。でもまあ、何かあった時にすぐ東京に来いと言われてもねえ。九州は東京から遠いし」と、業界の“顔役”を務めることに満更でもない表情で返した。
結果、その通りとなった。電事連の会長は1952年の設立以来、東京電力ホールディングス、関電、中電のいわゆる「中3社」による持ち回りで、現職の社長が務めてきた。業界5番手の九電から電事連会長が誕生することは、この慣例が崩れることを意味する。
それは電力業界のツートップ、東電と関電の“自滅”が招いたものに他ならない。
業界の頂点に君臨していた東電は、2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、当時の清水正孝社長が電事連会長を辞任した。事実上の国有会社になって以降、電事連会長のポストは辞退することになっている。
西日本の雄である関電は、岩根社長が19年6月に電事連会長に就任。事実上のナンバー2の常勤副会長も関電が務めることになり、いよいよ“我が世の春”を謳歌できると思った矢先、金品受領問題が発覚した。
そのうえ、中電が引き続き電事連会長を担うとい選択肢も実は消えた。ピカピカの社長1年生は電事連会長には就かないという暗黙のルールがあるからだ。
中電は勝野社長がこの4月に会長へ昇格し、後任に林欣吾専務執行役員が就くことが決まった。業界4番手の東北電力も社長交代が決まっている。社長就任2年目である九電の池辺氏しか、電事連会長に就く人材はいなかったのである。
九電関係者は「池辺氏は電事連会長をやりたくてやりたくてしょうがなかった」と明かす。実は昨年10月の時点で、池辺氏は自ら“志願”していたが、「体制が整えられない」と社内から反対に遭っていたという。