間違った「経済政策」で、日本が“後進国”になる

中野 非常に深刻な問題だと思いますよ。そのような間違った政策をやり続けてきた結果がこれです(図1)。

 これは、日本のGDPと財政支出とマネタリー・ベースの推移を示したものですが、ご覧のとおり、マネタリー・ベースはガンガン増えていますが、GDPはピクリとも動いていません。これを見れば、マネタリー・ベースの量はGDPとは全然関係ないことが一目瞭然です。

 こんなことは、2001年から2006年ごろまで日銀が量的緩和をしたときに、理解しなければいけなかったことなのに、その後、第2次安倍政権下で量的緩和を再開するってどういうことなんでしょうね?

 一方で、グラフにあるとおり、財政支出とGDPはぴったりくっついて推移しています。だったら、財政支出を増やせば、GDPも増えるんじゃないかって、小学生だって思いつきますよね?

 民間の資金需要がないデフレ下においては、財政支出をする以外に貨幣供給量を増やす方法はないんです(連載第3回第4回参照)。つまり、デフレ下においては、財政政策が金融政策になるということです。にもかかわらず、この20年間、政府は一生懸命、財政支出を抑制してきましたから、デフレが進んでGDPも伸びないわけです。

――マネタリー・ベースが積み上がっているのが、なんだか哀しく見えてきます……。

中野 まったくですね。そして、こんなバカなことをしている国は日本だけなんです。図2をご覧ください。

 これは、OECD33ヵ国の1997~2015年の財政支出の伸び率とGDP成長率をプロットしたものです。ご覧のとおり、財政支出とGDPには、強い相関関係があることが見て取れます。

 しかも、日本だけがポツンと最下位に位置しているわけです。日本が負け続けている理由は明らかで、財政支出を抑制しているからなんです。アメリカや中国に負けている理由をほかにいろいろ探してもしょうがないんです。

 ちなみに、1995年には日本のGDPは世界全体のGDPの17.5%でしたが、2015年には5.9%まで減っています(図3)。このままいけば、日本は先進国から後進国へ転落するということです。新型コロナウイルスがもたらす巨大な経済的打撃への対応を誤れば、後進国化は確定すると言っても過言ではないでしょう。

――かなり、ショッキングなデータですね……。しかし、アベノミクスでは金融緩和が第一の矢で、第二の矢で機動的な財政政策をすると言っていたのでは?

中野 そうなんですが、実際には、第2次安倍政権下の公共事業関係費は、「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げて大幅に公共事業を削った民主党政権の時とたいして変わりません。当初予算で見ると、鳩山民主党政権下の公共事業関係費の当初予算(2010年)よりも、むしろ低いくらいです(図4)。1990年代から進められている緊縮財政になんら変化はないということになります。

 そして、図5のとおり、先進各国のなかで日本だけが公共事業を大きく削減しているわけです。日本だけがデフレなのに、こんなことをやっていたら、“後進国化”するのも当然ですよね。

――気が重くなってきました……。