この20年間、デフレからの脱却に失敗し続けてきた結果、1995年には世界全体のGDPの17.5%を占めた日本のGDPは、2015年には5.9%まで低下。このまま放置し、さらに「コロナ経済対策」を誤れば、日本の“後進国”化がほぼ確定すると中野剛志氏は危惧する。なぜ、こんなことになったのか? 中野氏に、日本の「政策ミス」を聞いた。(構成:ダイヤモンド社 田中泰)

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「リフレ政策」が失敗した“当たり前”の理由

――前回、主流派経済学が「信用創造」を正しく理解していないために、間違った主張をしているとおっしゃいましたね?

中野剛志(以下、中野) ええ。主流派経済学の何が痛いかというと、「貸出が預金を生む」という事実を知らないことなんです。ついでに言っておくとですね、「デフレ脱却のため」という触れ込みで、主流派経済学者が主張して実行された、いわゆる「リフレ政策」がほとんど効果がないのも当たり前のことなんです。

――そうなんですか?

中野 もちろんです。「リフレ政策」とは、日銀は「インフレ率を2%にする」という目標(インフレ・ターゲット)を掲げ、その目標を達成するべく、大規模な量的緩和(マネタリー・ベースの増加)を行うというものです。

 マネタリー・ベースとは、銀行が日銀に開設した「日銀当座預金」のことです。銀行が保有している国債や株式を日銀が“爆買い”して、その対価として「日銀当座預金」を爆発的に増やせば、銀行は積極的に企業などに貸し付けることで、市中の通貨供給量(現金と預金通貨)を増やすことができると考えたわけです。

 通過供給量を増やしてデフレを脱却しようということ自体は正しいんです。デフレとは、貨幣の価値が上昇していく状態です。つまり、市中に出回っている通貨が少ないから、その価値が高まっているとも言えるわけです。だから、たしかに、市中の通貨供給量が増えればデフレを脱却することができるはずなんです。

 だけど、銀行は「日銀当座預金」を原資として貸し出しをしているわけではありません。繰り返しますが、「信用創造」によって貨幣が市中に供給されるのは、借り手が銀行に融資を申し込んだときなんです。

 ところが、いまはデフレなので借り手がいないわけです。だから、いくら「日銀当座預金」を積み上げても、貨幣供給量は増えません。実際、量的緩和で400兆円くらい日銀当座預金を増やしたはずですけど、ただ“ブタ積み”されているだけで、インフレ率は2%には遠く及ばないですよね?

――つまり、「信用創造」を理解していないから、誤った政策を実施してしまったと?

中野 そうですね。信用貨幣論と信用創造を理解している人は、量的緩和をやる前からこの結末はわかっていました。だけど、2001年から2006年まで量的緩和が実施され、さらに2012年に成立した第2次安倍政権のもとでさらに“異次元”の量的緩和が実行されてしまったわけです。

――なんだか、ガックリくるお話ですね……。