2019年の日本人国内旅行消費額

2019年の日本人国内旅行消費額
観光庁「旅行・観光消費動向調査」の速報値

 新型コロナウイルスによる感染拡大への懸念が強まっている。

 日本経済への悪影響は、訪日外国人旅行(インバウンド)で顕在化した。2020年2月の訪日中国人旅客数は執筆時点で明らかではないが、春節前後40日間における中国人の海外旅客数は前年同期から半減した。日本の百貨店大手の春節期間の免税売上高は、前年同期比2桁のマイナスが目立つ。

 仮に訪日中国人旅客が100万人減少すると、国内総生産(GDP)は波及効果を含めて2500億円程度押し下げられる。中国人旅客は飲食や宿泊のほか、化粧品への支出が特に多い。また静岡や奈良、愛知などでは、外国人宿泊客に占める中国人の割合が高い。

 さらに、新型肺炎の感染が日本国内でも拡大していることを受け、旅行先として日本を敬遠する動きが海外で広がっている。インバウンド消費に依存している観光地は今後、地域を問わず厳しくなる可能性がある。

 国内消費の観点からは、消費額が訪日外国人よりもはるかに大きい日本人の経済活動の自粛が強く懸念される。日本人の国内旅行消費額は19年で21.9兆円と、インバウンド消費額(4.8兆円)の5倍近い規模だ。報道によると、各地の観光地では外国人だけでなく、日本人の姿も以前のようには見られなくなったという。また政府の要請もあり、行事やイベントの延期・中止、テーマパークの休園などが相次いでいる。関連サービスの消費減は避けられない。

 振り返ると、経済活動の自粛は11年3月の東日本大震災後に見られた。その際、家計消費は被災地を中心に2.6兆円程度抑制されたと推計される。自動車や外食、旅行など不要不急の消費が先送りされた半面、食料や日用品など必需的な品目への支出はさほど減少しなかった。

 今回は活動自粛が全国で行われ、新型肺炎の感染拡大はいつまで続くのかも分からない。消費抑制額は東日本大震災後のそれを大きく上回るだろう。雇用・所得環境が悪化し、消費を一段と下押しすることも考えられる。新型肺炎の影響には引き続き注意が必要だ。

(大和総研シニアエコノミスト 神田慶司)