「ひかり」「こだま」の乗客が
混乱しないような配慮も

 2003年以降、「のぞみ」を1時間当たり2本増やすダイヤ改正は初めてのことだ。新ダイヤの作成にあたっては、運輸、車両、施設、電気など関係各部門からなるプロジェクトチームを結成して、ダイヤや設備改良の検討だけでなく、列車本数が増えることによるメンテナンスの増加やオペレーションの改善などさまざまな角度から検証を行ったそうだ。

 ダイヤ改正を重ねながら変わり続ける東海道新幹線。しかし、その中でも絶対に変えてはいけないものがあるという。「安全が何よりも優先されるので、途中駅の停車時分や、遅延対策として織り込んでいる駅間の余裕時分は変えないようにしています」

 例えば、途中駅で「のぞみ」が通過してから、待避していた「こだま」や「ひかり」が発車するまでの時間を短くすれば列車間隔をさらに短縮することは可能だが、そのためにドアを閉めるのを急ぎ、安全確認がおろそかになっては本末転倒だ。こうした安全確認に必要な時間は、常に一定時間確保するようにしているという。

 サービス面でも変えてはいけないことがある。東海道新幹線には「のぞみ」「ひかり」「こだま」という使命の異なる3つの列車があって、それぞれの乗客がいる。東名阪を結ぶ「のぞみ」ばかりが注目されがちだが、そのために「ひかり」「こだま」の発車間隔や時刻や停車パターンが変わってしまうと、普段使っている乗客が混乱してしまうので、これらは極力変えないようにしているそうだ。

 こうしていくつもの制約のもと、シミュレーションを積み重ね、連立方程式を解いていくかのように進められたダイヤ作成作業だが、重要なことがもう一つあるという。「ある程度ダイヤができてから、オペレーション上、問題がないか駅に意見を聞いています。ダイヤ作成者も気を付けてはいるのですが、駅の実態が分からないところもあるからです」と、下村さん。

 のぞみ12本化の検討が始まったのは2015年。骨格が出来上がり、のぞみ12本化のスケジュールが公表されたのは昨年の4月頃。その後、昨年12月にダイヤ改正の詳細が発表されるまで、内部で細かい修正をしていた。「今回のダイヤ作成にあたっては、駅の意見を取り入れて、列車の到着番線を変更するなどの修正を行いました」

 さまざまな観点から検討を積み重ね、新しいダイヤは形作られていく。下村さんは新ダイヤについて「ダイヤ改正によって今よりも指定席が取りやすくなります。指定席を取れなかった場合でも、自由席も2割増加するため、混雑時間帯や繁忙期でも座りやすくなる効果が期待できます」と語る。「この商品は自信作ですか」という筆者の問いに、下村さんは当然と言わんばかりにうなずいた。