日本人に特徴的な
認知のゆがみとは

 読者の中には、こうした認知のゆがみに疑問を持つ人もいるかもしれない。謙虚さを美徳とする日本人の場合は、自信過剰なくらいに自分を押し出さないと生きていけない欧米人と違って、ポジティブ・イリュージョンはないのではないかと。

『薄っぺらいのに自信満々な人』
日本経済新聞出版社、850円(税別)

 だが、日本人を対象とした心理学的調査においてもポジティブ・イリュージョンが見られることが確認されている。

 ただし、ポジティブ・イリュージョンの内容に明らかな文化差が見られることがわかっている。

 欧米人は「能力」や「容姿容貌」に関して「自分は平均より優れている」と思い込むポジティブ・イリュージョンを持つ傾向がある。だが、日本人の場合は、そのような側面に関しては、むしろ「自分は平均より劣る」というネガティブ・イリュージョンを持つことが多い。

 一方、日本人が「自分は平均より上」と思い込む傾向が強いのは、「やさしさ」「まじめさ」「責任感」などである。

 ゆえに「こんなにまじめに働いているのに、なぜ評価してくれないんだ」「こんなに責任感が強いのに、どうしてそれを評価してもらえないのか」といった不満が職場に渦巻くことになる。

 いずれにせよ、人事評価をする側も、される側も、人間にはこのような自己愛に満ちた認知のゆがみがあるということを念頭において、職場のモチベーションの高揚を心がけるべきだろう。