FRB(米連邦準備制度理事会)がゼロ金利政策と量的緩和政策を復活させるなど、主要国の中央銀行や政府はなりふり構わぬ行動に出ている。現金確保の動きに見られる、新型コロナウイルス感染拡大による信用収縮懸念を払拭し、市場の混乱を収めるためだ。しかし、景気の底がつかめない市場の反応は鈍い。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)
「金融環境も著しく引き締まった。信用コストは上がった」と、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、3月15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で語った。新型コロナウイルス感染拡大による世界経済後退懸念に揺れる金融市場は、資金繰りの悪化、信用収縮に陥りかねない状況にある。その危機感がFRBを大幅な金融緩和策導入へと動かした。
FRBは3月17、18日に予定されていたFOMC開催を3月15日に前倒しし、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標を1.00~1.25%から1%引き下げ、0~0.25%とし、実質ゼロ金利にした。
加えて、国債を5000億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を2000億ドル買い入れることを決定し、量的緩和を再開した。16日には、企業が短期資金を調達するために発行するCP(コマーシャルペーパー)を買い入れる緊急措置を発表した。CP購入の枠組み導入は2008年のリーマンショック以来である。
先行きが不透明になり、リスクが大きくなると、投資家はまず株式や原油などのリスクの高い商品を売り、国債などに代表されるリスクの低い商品を買う。この状態であれば、まだ金融危機ではない。