現金を確保する上で最も需要な通貨は、やはり基軸通貨であるドルだ。ドルの需要が高まったことで、リスクオフ時には円高方向に振れる円の対ドルレートは逆に円安方向に振れていった(下図参照)。16日にFRB、日本銀行など主要国の6中央銀行がドル供給の枠組みを拡大したのは、こうしたドル資金需要に応じるためだ。

 中銀がなりふり構わず緩和手段を講じる中、当局による大型の財政政策も動き始めた。17日にトランプ政権は、現金給付を含む1兆ドルに上る景気刺激策を提案した。

 しかし、こうした政策発動が効果を上げているとは言い難い。依然、市場の反応は鈍い。

 FRBのゼロ金利政策、量的緩和政策発動を受けた16日、日経平均株価は429円安、ニューヨークダウに至っては2997ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

 トランプ政権の景気刺激策が表明された17日に、ニューヨークダウは1048ドル高と反発したが、前日の下げ幅の3分の1ほど値を戻しただけである。18日午後の先物の時間外取引の価格は、17日の現物の終値より1000ドル前後低い水準で推移している。日経平均株価は284円安となった。

 金融政策による資金繰り支援、財政発動による景気刺激策の効果はある。しかし、やはり新型コロナウイルス感染のピークが見えてこない限り、市場は景気の底がつかめない。低迷が続く原油価格がそれを象徴している。不透明さが残る限り、市場の不安定な動きは続くだろう。