異動したければ
複数に「張っておく」べし

 では、このような会社にいて、どうにか異動したいと思っているあなた。何らかのきっかけでいつか訪れるチャンスのために、どう準備しておくべきだろうか。

 おすすめは、1つの部署に決めうちではなく、いくつかの部署に自分をアピールしておくことだ。どこかに一瞬の空きができたときのために、いくつかの部署に「張っておく」のである。社内は何度も言うように大混乱の中にあるのだから、あなたの異動願いもそれほど吟味されることはなく、同じポストをめぐって優秀な人と比べられることも少ないだろう。そうすれば、どさくさにまぎれての異動は十分遂行可能である。

 しかしながら先述の通り、まずはあなたを採る側の採用枠とあなたである必然性がなくてはならない。もちろん熱意だけでは不十分だ。
 
 この必然性に関しては、会社によっては資格を持っていることが重要な場合もあるし、何らかの経験が重要視される場合もあるだろう。社会的な人脈や地縁血縁がそれに該当することもある。それがあったうえで、熱意が大事と考える会社もある。リファラル採用のように、何がしかの過去の社内外の人的ネットワークが利く場合もある。

 いずれにせよ、相手側にあなたを欲しがる必然性がないのであれば、異動できないのも当然である。よく自己申告をし続けているのに一向に考慮してもらえないと嘆く人を見かけるが、必然性なしに希望が通ると思うな、ということである。会社があなたに見いだしている価値とあなたが自分で思っている価値が一致しているという場合は残念ながらほとんどないので、「異動できないなら辞めます」と退職をちらつかせるというのもあまり好手とはいえない。

 もちろん自己申告を出してさえいれば、あなたの将来やキャリアプランを一生懸命に考えてくれるという良い会社もあるかもしれないが、もっと巧妙に考えた方が異動の実現可能性は高まる。飲み屋で人事の悪口を言っている間は、希望の異動は実現しないだろう。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)