A:計画的異動 

 上記の1、3、4に相当。過去の大企業や役所などによく見られる形式で、ローテーションのルーティンがあり、人事異動は先例に従い、ほぼ決まった流れに沿って実施される。古き良き日本のやり方とでもいおうか。

B:戦略的異動 

 上記の2、5に相当。会社の経営計画に基づいて優先事業に人材の投入が行われる。そのときの会社の方針次第で、「これからはこの事業に傾注する」などと宣言が行われ、それに基づいて大規模な人事異動が実施される。オーナー企業でよく見られる。

C:取引的異動

 上記の6に相当。個々の部署間の個別のニーズに基づいて、来てほしい人と出したい人が明確化され、相対取引が行われる。

旧態依然の大企業で
イレギュラーな異動は難しい

 では、上記のA:計画的異動、B:戦略的異動、C:取引的異動のそれぞれにおいて、自分の希望する部署に異動できる方策はあるだろうか?
 
 A:計画的異動の会社の場合、時間がたてば他の部署への異動そのものは間違いなくできるが、全体的に異動ルールが決定されている中で、基本線から外れる部署に異動するのは極めて難しい。

 もし1カ所でもイレギュラーな人事を許してしまうと、玉突きの調整をするのが大変なうえに、中央のコントロールタワーが個々の事情を考慮すること自体が特定の人の利益を優先していると捉えられるため、好きなところに異動することは極めて難しい。規定ルートの中から、自分にとって一番ましな部署を希望するくらいが現実的である。

 B:戦略的異動の会社は、会社の経営計画に基づいて常に大胆な人事異動が行われているため、社内は混乱に慣れている。その混乱に乗じたり、間隙を縫ったりして希望の異動を獲得することは十分に可能だ(具体的な方法は後に述べる)。

 C:取引的異動のみの会社の場合、欲しい側と出したい側の相対取引となるので、まずは買い手側から話がないと始まらない。あなたの行きたい部署の責任者は人を欲しているか。欲しているならどんな人が必要と考えているか。そして、なぜ他の人でなくあなたなのか……。その部署で人を採る必要性と、採るべき人材があなたである必然性が弱い場合は、そもそもあなたへの需要が発生しないし、社内の人材市場で買いのサインが出ない。

 この場合の必然性というのはなにも、その部署には今後こういう業務が生じるからその業務経験とスキルのある自分がそれを担える、という「きれいな話」である必要はない。その責任者が苦手とし、かつ重要な取引先に、自分はなぜかすごく顔が利くといった理由でもよいのだ。とにかく行き先の部署がどういう事情であれ、「あなたでなければならないという実質的な必然性」があるかどうか、が重要だ。