より長く措置を講じたら
雇用はむしろ増える?

 米連邦準備理事会(FRB)のエコノミスト、セルジオ・コレイア氏らが3月26日に公開した論文がそれだ。1918年のスペイン風邪(インフルエンザの世界的大流行)当時の米国での大封鎖措置と経済の回復度を分析。その上で、「より早期に、より積極的に大封鎖を行ったほうが、パンデミック終息後の雇用や製造業の生産、金融にプラスになる」と結論付けている。

 スペイン風邪の当時も米国では人の隔離、劇場や教会の閉鎖、集会の禁止、店舗などの営業時間の短縮といった措置が講じられた。論文ではニューヨーク、サンフランシスコなど43都市について、インフルエンザ感染者の発生や死亡率に対してどれだけの速さで大封鎖を講じたかを数値化。その数値と、製造業の雇用数や銀行融資といった経済の活性度を測るデータの推移をかけ合わせた。その結果では、「パンデミックの到来に対して10日早く措置を講ずれば、製造業の雇用数は結果として5%増加している」「50日間長く措置を講ずれば、同様に6.5%増加する」というのだ。

FRBエコノミストらによる論文で示された図。緑の丸は、人の隔離や店舗営業時間の短縮などの措置をより長く講じた都市。左上のゾーンに緑の丸が多いことは、こういった都市の雇用の伸びがより高かったという分析結果を示している 出所:Pandemics Depress the Economy, Public Health Interventions Do Not: Evidence from the 1918 Flu 拡大画像表示

 注意が必要なのは、この論文は約100年前の限られたデータを基にしている。当時は定期的な雇用統計が現在ほど精緻ではなかった。また海外との経済・貿易関係は現在のほうが複雑だが、他国の大封鎖措置が自国経済に与える影響は論文には織り込まれていない。またスペイン風邪が2つの世界大戦の間という特殊な時期に発生したことも、現在との比較を難しくしている。またこの論文は査読(学術論文を専門家が読み、その内容を評価すること)を経ていない段階であり、学術的にも、この論文の結論を全面的に正しいと見なすのは、実のところ危険な行為だ。