学校におけるLGBT当事者への対応
先生たちはどう考えていくべきか?
LGBTがメディアに取り上げられるわりには、教職員(以下、「先生」とも表記)に知識が浸透しているとは言い難い。LGBTに対する公的な教職員研修はそれほど行われていないので、先生たちの理解不足も仕方ないだろう。関心を持った先生個人がインターネットなどで記事を見繕い、断片的な情報を得るのがまだ一般的だ。
ところが、ネット上の情報は書き手の主観に満ちたものだったり、明らかに誤っているものも混在する。セクシュアリティの全容を把握している研究者も少なく、状況や当事者の望みに応じた“LGBTへの対応マニュアル”もほとんど存在しない。そのために、偏った情報に基づく対応を先生が行い、LGBTの子どもたちが余計に困惑し、悩みを深めるケースも少なくない。また、LGBTを支援する団体や当事者が必ずしも正確な知識を持っているわけでなく、学校側に指針がないまま「専門家任せ」にすると、想定外のトラブルが起きる可能性もある。
では、学校側はどうすれば良いか?
まずは、複数の情報をバランスよく収集したうえで、校長・副校長・教頭といった管理職が正しい知見を得て、それぞれの校風や教育方針に合ったLGBTの子どもたちへの向き合い方を考えるべきだろう。
子ども(生徒)たちへの対応には2つの面がある。
ひとつは、「生徒全員に対しての、セクシュアリティに関する教育」という面。
いまや、子どもたちもLGBTという言葉を耳にする機会が増えたことで、自分のセクシュアリティに疑問を感じた者や、関心を持った者がスマホなどで“検索”するが、そこで得られる情報は玉石混交。だから、学校側は、基本的な情報を生徒にあらかじめ提供しておくことが必要となる。自校の生徒たちが知っておくべき事柄を整理し、伝える範囲を明確にすること。そして、思春期特有の「性の揺らぎ」に直面している生徒の存在は常に考慮していきたい。
もうひとつは、「LGBT当事者に対しての個別対応」という面。
各校は、LGBTの子どもそれぞれへの対応を前提に、ある程度の方向性を定めておく必要がある。当事者の性自認や性的指向はさまざまであり、マニュアルどおりで解決するわけではない。悩みを抱えた子どもと丁寧に対座していくことを念頭に、現在の状況や当事者の希望を汲み取ったうえでの個別対応を行わなければならない。その際に大切なのは、慌てないこと・騒がないこと。LGBTへの知識が少ないことで当該の生徒をいたずらに「腫れ物」扱いすれば、その子どもが孤立してしまうことは言うまでもない。