新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した需要減に、産油国同士の「価格戦争」が加わって原油価格が暴落した「逆オイルショック」は、史上初めて「マイナス価格」まで突き抜けた。特集『逆オイルショック経済』(全5回)の#4では、逆オイルショックが招く新たな“世界恐慌”の危機について解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
3度目の逆オイルショックは
全くの異次元だった
これほど人通りが少なく閑散とした東京・渋谷のスクランブル交差点を見たことがあるだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大は、ヒト・モノ・カネの動きをかつてないほど制限し、実体経済に甚大な影響を与えた。
原油は私たちの生活のエネルギー源であり、化学製品の基であり、実体経済の“血液”だ。その原油も世界の実体経済を揺るがしたコロナショックから逃れることはできなかった。歴史上初めて「マイナス価格」を記録し、まさに底を抜けてしまったのである。
世界は原油価格が暴落する「逆オイルショック」をこれまでに1986年と2014年に経験している。ただし、いずれもマイナスまで価格が突き抜けることはなかった。今回の逆オイルショックは、これまでのものと全くの異次元であることを物語っている。
国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しで、2020年の世界経済全体の成長率が、1929年の世界大恐慌以来の水準であるマイナス3%になるとし、すでにコロナショックによる恐慌の様相を呈している。感染拡大の封じ込めに失敗すれば、世界大恐慌は、より深刻で長期化する恐れがある。
新型コロナ危機が終息しても、果たして世界経済は復活に向かうのだろうか。というのも、コロナショックは私たちの社会生活と経済活動を大きく変えてしまったからだ。
復活の鍵は、実体経済の“血液”である原油といえるだろう。この“血液”が世界でスムーズに循環しなければ、異次元の逆オイルショックが長引き、新たな世界恐慌に直面する危機が潜んでいるのだ。