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原油価格の暴落に引きずられて液化天然ガス(LNG)の価格も下落した。これにより「安価な発電燃料」は石炭からLNGへ代わるかもしれない。緊急特集『逆オイルショック経済』(全5回)の#5では、発電燃料の大転換で得する会社、割を食う会社を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

「安い」から使われた石炭は
原油暴落でその生命線を失う

 100年前にエネルギーの主役は石炭から石油へと大転換した。それから100年後の現代、主役の座を追われた石炭はさらに液化天然ガス(LNG)に取って代わられる瀬戸際に立つ。

 1911年に大英帝国のチャーチル海軍大臣は、大英艦隊の燃料を石炭から石油へと切り替えた。より熱効率が良かったからだ。石油を使えば艦隊の航行距離が長くなり、航行速度もアップする。海戦で有利に戦えると判断した。

 その流れは英国、海戦にとどまらなかった。1914年に勃発した第1次世界大戦では、石油を燃料とする飛行機や戦車が投入された。世界各国で石油がエネルギー源になった。

 ただ、主役の座から引きずり降ろされても、石炭は重要なエネルギー源であり続けた。地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素(CO2)を多く排出するため、環境を破壊する“悪者”と名指しされている。それでもなお、日本を含む先進国や新興国は火力発電所の燃料として使っている。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、石炭は世界のエネルギー需要の26%を賄っている。なぜ世界は石炭を使い続けるのか。

 答えは単純で、石油に比べて安いからである。

 ところが目下、石炭はその生命線までも失う局面に立つ。石炭より発電効率が良く、CO2排出量が少ない液化天然ガス(LNG)が、石炭の価格に迫ろうとしているのだ。

 LNGが安くなる原因は、意外にも原油価格の暴落にある。