『週刊ダイヤモンド』5月16日号の第1特集は「最後の旧来型エリート 商社」です。高給で就職人気の高い総合商社は、日本に残された最後の旧来型エリート集団の象徴といえますが、彼らの稼ぐ力に限界が見え始めています。成長期待の低さから株式市場に見放され、若手人材の流出も止まりません。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が、旧来型ビジネスから脱却できない商社の姿を浮き彫りにしています。商社は直面する苦難の時代を乗り切れるのでしょうか。

伊藤忠のDNAに刻まれた
非資源で打倒!財閥系の半世紀

最後の旧来型エリートの牙城「商社」がコロナ禍で迎える危急存亡Photo:PIXTA

「昔は三菱(商事)、三井(物産)、住友(商事)という財閥系商社が常に前に立ちはだかり、その壁は高くて厚かった。うちは大阪の繊維商社として始まり、東京へ攻めて総合商社になろうとしたが、大口の電力会社や製鉄会社に全く相手にされなかった」

 4月15日、東京・北青山の伊藤忠商事東京本社。インタビューの冒頭、そう語り始めた会長CEO(最高経営責任者)の岡藤正広氏の手元には、最近読み始めたという1冊の本があった。元伊藤忠中国総代表の藤野文晤氏らのインタビューが収録された『証言 戦後日中関係秘史』(岩波書店)だ。

 そのページを繰りながら岡藤氏が口にしたのは、伊藤忠の第5代社長、越後正一氏の名だった。越後氏は、太平洋戦争時に大本営作戦参謀だった瀬島龍三氏を招聘し、その人脈や戦略を用いて中国ビジネスなどに参入した。