トヨタの今期見通し
営業黒字確保に見る「強さ」
現在の国際経済は、新型コロナウイルスの感染拡大で大恐慌以来の苦境に直面しています。一方、企業家は、未曽有の需要消失の危機に直面しても、日々の経営判断を行わなければなりません。大企業の経営者の一挙手一投足に、今ほど人々の注目が集まっているときはありません。
トヨタ自動車は5月12日、2020年3月期の決算を発表しました。コロナ禍にあっても特段の遅れもなく、例年どおりの発表でした。結果は、売上高が29兆9299億円(前年同期比▲1.0%)、営業利益が2兆4428億円(同▲1.0%)、当期純利益が2兆0761億円(同+10.3%)でした。
当初の9ヵ月は、販売が好調で利益計画を増額修正するほどでしたが、年明け後の3ヵ月間で状況は大きく変わりました。新型コロナウイルスの影響で販売が急減し、世界の販売台数はトヨタ単体で895万8000台(前年比▲1万9000台、▲0.2%)まで減少しました(グループ全体では1045万7000台)。
トヨタは、世界最大手の自動車メーカーの矜持として、2021年3月期の見通しも公表しています。売上高は24兆円(前年同期比▲19.8%)、営業利益は5000億円(同▲79.5%)と大幅な減少です。販売台数の前提は、トヨタ単体で700万台(前年比▲195万8000台、▲21.9%)、グループ全体では890万台(▲155万7000台、▲14.9%)です。
リーマンショック直後の2009年3月期は、販売台数が▲12%減少し、営業利益は▲4610億円の赤字転落となりました。そのときと比べれば、今回は販売台数の落ち込みを厳しく見積もっていますが、営業利益は黒字を確保しています。豊田章男社長が「(リーマン時よりも)企業体質を強化した」と述べたように、長年の原価低減がここで生きます。