――この本を読んでいると「あれ、リアルってなんだろう?」「これまで、自分が信じていたリアルとは違うリアルがあるのかな?」とどんどん思考の渦に引き込まれて、知らず知らずのうちに「アート思考」を体験している感じになります。

末永 それはうれしい感想です。ピカソの絵にしても、本のなかで取り上げているエジプトの壁画にしても、いわゆる写真のようなリアルさはないんですが、それぞれの作品には、それぞれの作品に込められた「リアルさ」があるってことがわかってくると、ますます、「リアルさってなんだ?」「アートってなんだろう?」という疑問が湧いてくるんです。

 そうやって考えていくことがまさに「アート思考」で、そういう体験をこの本では多くの人にしてもらいたいと思っています。

コロナ時代に「真面目で優秀な人」が体験すること

 この本を読んだ方の感想のなかには「いままで自分が考えていた拠り所が奪われていくような感覚があった」とか「地面から足が浮き上がって、自分がいたところからどんどん離れていくみたいな感じがした」、あるいは「見るという定義が変わってしまった」というようなものがあったのですが、そんなふうに前提が覆ったり、本質的なことをいろいろと考えて、新しい問いに向き合っていくというのも「アート思考」らしいところだと思っています。

 だからこそ、いまという不確実で、前提がひっくり返ってしまうような、変化の大きい時代に「アート思考」が求められているのかもしれません。

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第1回 なぜ中高生向けの「美術」の授業で、「自分なりの答えを見つける力」が育つのか?
第2回 仕事がつまらない人に共通する「うまい絵を描かなきゃいけない」という呪縛
第3回 コロナ時代に「真面目で優秀な人」が体験すること
第4回 もう“みんなの意見”に流されない。「自分なりの視点」がある人になる3つの方法

コロナ時代に「真面目で優秀な人」が体験すること