――この本を読んでいると「あれ、リアルってなんだろう?」「これまで、自分が信じていたリアルとは違うリアルがあるのかな?」とどんどん思考の渦に引き込まれて、知らず知らずのうちに「アート思考」を体験している感じになります。
末永 それはうれしい感想です。ピカソの絵にしても、本のなかで取り上げているエジプトの壁画にしても、いわゆる写真のようなリアルさはないんですが、それぞれの作品には、それぞれの作品に込められた「リアルさ」があるってことがわかってくると、ますます、「リアルさってなんだ?」「アートってなんだろう?」という疑問が湧いてくるんです。
そうやって考えていくことがまさに「アート思考」で、そういう体験をこの本では多くの人にしてもらいたいと思っています。
この本を読んだ方の感想のなかには「いままで自分が考えていた拠り所が奪われていくような感覚があった」とか「地面から足が浮き上がって、自分がいたところからどんどん離れていくみたいな感じがした」、あるいは「見るという定義が変わってしまった」というようなものがあったのですが、そんなふうに前提が覆ったり、本質的なことをいろいろと考えて、新しい問いに向き合っていくというのも「アート思考」らしいところだと思っています。
だからこそ、いまという不確実で、前提がひっくり返ってしまうような、変化の大きい時代に「アート思考」が求められているのかもしれません。
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