薄いユーザーをたくさん集めるのではなく、濃いファンを1人でも増やす

コアなファンとともに歩むゲームアプリ「Fate/Grand Order」のつくりかたFGOのTwitterアカウント

 テレビCMやTwitter、ニコニコ動画やAbemaTVでの特番、コンビニでのコラボ商品の発売など多角的に宣伝しているFGO PROJECTではあるが、これまで見てきたとおり、マス向けの宣伝よりもコアなユーザーとの“強い結びつき”を最も大事にしている。

「どちらかというとFGOは、CMやWebマーケティングでユーザー数が増えてきたわけではないんです。アンケートの結果などをみても、ありがたいことに大半のお客様が『このゲーム面白いからやってみて』と、お客様がお客様を呼ぶような形でお客様が増えているんです」(石倉さん)

 第2部がスタートしてからもユーザー数は増加しつづけ、社会現象になるほど巨大化したメディアミックス・プロジェクトでありながら、コアユーザーの「口コミ」がエンジンになっているのが他の作品との決定的に異なる点だと言えるだろう。

「結局、ブランドってなんだろうと。私たちは、興味の薄い人たちをたくさん集めて数字を出すより、愛して愛してやまない人たちを1人でも2人でも多くするためにどうするべきか、ということを奈須さん含めて日々、考えています。そういう熱量の高いユーザーの方々こそが私たちにとって最も大切な広報マンなんです」(石倉さん)

 顔の見えない関係性を増やして数字を取りにいかないその姿勢からは、ブランドというものの原点も見えてくる

ユーザーとともに歩むFGOに、何を学べるか

 情報メディアも、紙からウェブ、そしてアプリへという流れが既定路線となってきている。スマホファーストな一般市民にとって、情報を得るために新聞を開いたりPCを立ち上げたりする動作は、もはや煩わしささえ感じるものだ。しかし、そんな目まぐるしく変わるメディアの状況に対応しようとするなかで、使いやすさばかりに目が行き、コンテンツの質の高さというシンプルな指標を失っているメディアは多いのではないだろうか

 メディアに関わる人間は、新しく登場するさまざまなサービスを「取材対象」として向こう側においやるのではなく、学ぶべき競合相手と考える思考の転換が必要だ。ファンと開発者のコミュニケーションを促進し、いち開発者がトレンド入りになるようなゲームアプリFGOこそ、コミュニティに根差したメディアづくりのヒントが詰まっている。

 つまり、これからのメディアは単に一方的にコンテンツを発信するだけでなく、膨大なユーザーを抱えていたとしても顔の見えるコアなユーザーとの“つながり”を捨ててはいけない。ある価値観を共有したコアな“コミュニティ”が、その価値観をベースに情報やお金を循環させる、ある規模の経済圏を形成する。その規模は10人にも1000万人にもなりうる。広告の力を借りてエンゲージメントの低いPVや購読者数をいっとき水増ししたとしても、それは「本当のユーザー」の数を表しているとは言えない。コンテンツの質を保ちながら、1人でも「本当のユーザー」を獲得し、彼らが離脱しないように精魂込めて運用していくことが大切なのだ。