障がい者を雇用することによって企業が得られる強みとは?
「施設や設備にコストをかけることができ、また、社員数が多いためにサポート体制が整っている企業などは、障がい者雇用に対して有利であることは間違いありません。しかし、郵送物の配達といった軽作業や事務作業など、仕事の一部を切り出して、障がい者に適した業務をうまくつくり出している企業もあります」(手塚氏)
障がい者が仕事に一生懸命取り組む姿に既存の社員が元気づけられるなど、その存在が社内に良い影響を与えることも多いという。また、障がい者の業務能力の高さを目の当たりにして「仕事の能力に障がいは関係ないと気づかされた」「偏見や誤解が解消された」などのポジティブな声も企業からは聞こえてくる。
価値観や立場が異なる人の集まり(ダイバーシティ)は、新たな気づきを生み(インクルージョン)、働く者同士の知見を高めていく。それが、障がい者を雇用することによって企業が得られる強みのひとつだろう。さらに、障がい者のためにつくり出した仕事が、「健康上に問題が生じた既存社員の雇用の受け皿になった」というケースや、設備変更によって「生産性がアップした・社員全員にとって働きやすい職場になった」という想定外のメリットを生むケースもある。
雇用の関心が高まるなか、障がい者が活躍できる場所は確実に広がっている。障がい者雇用に特化している「特例子会社」は全国で517社を超え、36万人以上の障がい者が活躍している(2019年時点・厚生労働省調べ)。また、障がい者が働くことのできる農園などを企業が借りて雇用を創出する動きもここ10年間で急速に増えている。従来の常識にとらわれない新しい雇用方法に注目が集まっている。