ドナルド・トランプ米大統領
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2020年の大統領選挙を前に、米国が人種問題に揺れている。トランプ大統領が人種差別とも批判される言動で白人票固めを急ぐ一方で、民主党の各候補は黒人票の獲得を競う。奴隷制から公民権運動へと重い歴史を持つ人種間の分断が、大統領選挙の行方を左右しそうな雲行きだ。(みずほ総合研究所欧米調査部長 安井明彦)

トランプ支持者が
「人種差別」的な発言に追随

「彼女を(国に)送り返せ、彼女を(国に)送り返せ」

 7月17日、ノースカロライナ州で行われた選挙集会で、支持者から自然発生的に沸き起こったコールが、全米を驚愕させている。「人種差別」とも批判されたトランプ大統領の言動を、支持者が自発的に受け継いだからだ。米国の汚点であるはずの人種差別を示唆する言葉が広く共有された衝撃からか、当日の夕方には、辞書大手のメリアム・ウェブスター社のサイトで、人種差別が検索ワードの1位に躍りでた。

 引き金となったのは、トランプ大統領による3日前のツィートである。トランプ大統領は、集会に先立つ7月14日、ソマリア生まれのオマール下院議員や、プエルトルコ系のオカシオコルテス下院議員など、民主党の4人の女性・非白人議員を、もともといた国に「帰ったらどうか」とツィッターで攻撃した。

 これに対して、民主党の議員を中心に「大統領にあるまじき人種差別的な発言だ」との反発が広がった。民主党が多数派である米下院では、大統領を非難する決議が採択される騒ぎとなっている。

 米メディアは、その言葉が持つ歴史的な重みから、あまり人種差別という表現を使わない。しかし、今回のトランプ大統領のツィートに関しては、「米国の人種差別の歴史に深く根ざした言葉使いだ(ワシントンポスト紙)」と断じる向きがある。

 第二次世界大戦当時の日系移民が標的となったように、特定の人種の人々を「(国に)帰れ」と攻撃するのは、米国における人種差別の伝統的な論法だという。なかには、過去にオバマ大統領が米国生まれかどうかを疑問視した経緯などを紐解き、トランプ大統領の人種差別的な傾向を指摘する報道すら見られる。