わかりやすいのが、前回の都知事選だろう。

 忘れてしまっている方も多いだろうが、このときの小池氏は今をはるかにしのぐ凄まじい「批判」を四方八方から受けていた。

 自民党内の方針や手続きを完全に無視して、国政から都知事選出馬に動いたことに加え、党籍を残しながらメディアで都議会自民党を痛烈に批判するという「掟破り」に対して、党内やその支持者から「うそつき」「わがまま」などの批判が殺到していたのである。

 たとえば、石原伸晃東京都連会長(当時)は「小池氏は私がいないときに推薦依頼を持ってきて、私がいないときに推薦依頼を引き取って行った」と指摘。父親で元東京都知事の石原慎太郎氏も、小池氏が都連の会合に一度も出ていないのに痛烈な都連批判をしていることから、「あの人は嘘つき」「大年増の厚化粧」とボロカスに叩いた。

「稀代のケンカ師」が見せた
論点の見事なすり替え

 この全方向からのバッシングに、並みの政治家なら顔を真っ赤にして反論をするくらいが関の山だが、稀代の女ケンカ師である小池氏は違う。これらの批判をネタに、以下のような街頭演説をしたのだ。

「むちゃくちゃひどいことを言われるのに慣れている。だからこそ都知事に通って、『女は聞き分けがいい』『女は使い勝手がいい』などとは思わせない」

 なんとも絶妙な“論点のすり替え”がおわかりいただけるだろうか。石原親子は、組織のガバナンスを無視したスタンドプレーや独善的な主張を批判していたのだが、小池氏はそれにまともに取り合うことなく、「厚化粧」という言葉を逆手にとって、「自分へ向けられるバッシングは政治の世界に蔓延する『女性差別』がゆえのことだ」と、有権者にアピールしている。

 要するに、自らの「批判」を「自民党の古い体質に反旗を翻した女性政治家」という、セルフブランディングの材料に変えてしまったのだ。