五輪の延期や中止によって発生しうるコストの内容や、組織委内部で懸念されていた問題について、本編集部は3月13日に公開した記事「五輪中止・延期でスポンサー料3480億円はどうなる?組織委内部の議論を暴露」で詳報している。

 五輪の延期は3月24日に正式に決まったが、南米など海外では今なお新型コロナの感染拡大が続く一方、ワクチンや特効薬が開発される見通しはまだ立っていない。

 安倍晋三首相は5月28日、国連のコロナ関連会合に寄せたビデオメッセージで、「人類が打ち勝った証として来年の東京五輪を完全な形で開催する決意だ」と発言した。しかし、都や組織委は簡素化に向けて動き始めている。

 セレモニーや施設の簡素化に加え、小池百合子東京都知事が6月5日の定例記者会見で「密にしてはだめです」と語ったように、コロナの感染防止対策も必須となる。だがこれとて決して容易ではない。

 例えば、東京湾岸の有明にある展示施設「東京ビッグサイト」では、東展示棟と東新展示棟を国際放送センター(IBC)、西展示棟と会議棟をメインプレスセンター(MPC)として組織委が借り上げる。

 IBCは発電機などを備えた巨大で複雑な装置を要するもので、一連の設備はすでにそのまま据え置かれている。

 一方でMPCの工事は、中止が決まらない限り来年に始まる予定だが、従来通りの計画のまま工事を進めていいのかどうか、まだ結論が出ていない。

 総工費を減らすために設計をやり直すにしても、新たに設計するだけで多額のコストを要する。加えて、重要な施設であるため警察などと協議して警備の計画を作り上げているが、施設の仕様や設計が変われば、これらも変更を求められる可能性がある。

 また工事に使うパーテーションのような壁材などは購入済みのものもあり、設計や仕様の変更に応じて発注し直すことになれば、コストが余計に発生する可能性があるという。

 そこへ加わるのがコロナの感染予防対策だ。