延期によるコスト増加分の抑制に加え、新型コロナウイルスへの対策まで求められるようになった東京オリンピック・パラリンピック。中止の可能性も高まる不安定な状態は、組織委や行政の現場に歪みを生み出している。コロナの終息もままならない中、“スポーツの祭典”に酔いしれる余裕はあるのだろうか。膨らんだコストを負担するのもまた、私たちなのである。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
設計や仕様の変更が生むコスト
警備計画や動線の見直しも必至
新型コロナウイルスの感染拡大によって開催が来年7月に延期された東京オリンピック・パラリンピック。延期に伴い3000億円程度の追加費用がかかると試算されているが、国際オリンピック委員会(IOC)は、そのうち約700億円しか負担しないと早々に予防線を張った。つまり、残りの経費は日本が、主に開催都市である東京都が被ることになるだろう。
財政的な問題や、コロナの感染防止策を採るため、政府や東京都の幹部たちは6月4日、来夏開催の東京五輪について、開閉会式などのセレモニーを中心に簡素化を検討していると明らかにした。
同日の東京株式市場では、五輪関連で多額の収益を上げるとみられていた電通グループの株価が前日比4%下落。コロナの給付金問題に揺れる同社には“泣き面に蜂”となったが、懊悩しているのはもちろん、電通だけではない。
「施設を簡素化しろと言われても、仕様や設計を変更してやり直せば、余計にコストがかかるというジレンマがある」と、ある五輪組織委員会関係者は打ち明ける。