外国人と高齢者の増加など、急速に進む日本社会の多様化
そうしたなか、日本における“ダイバーシティ&インクルージョン”で、このところクローズアップされているのが外国人の受け入れだ。源流は、1981年に出入国管理法が改正され、開発途上国の経済発展を目的として外国人研修制度が設けられたことにある。
1980年代後半=バブル景気の頃になると、南米の日系人、次いで、パキスタンやバングラデシュ、イランなど中近東から労働者がやってきた。当時、日本は単純労働者の受け入れを認めておらず、多くは観光ビザや学生ビザなどで来日し、不法就労の形で建設業や製造業に携わった。
1990年に入管法が改正されて在留資格が整備されると、日系人については職種の制限なく就労が認められるようになった。外国人研修制度も同年に緩和され、商工会議所などによる団体監理型が導入された。1993年には新しく技能実習制度が始まり、研修終了後も追加で最大1年(後に2年)の滞在が許可された。
そして、2019年、少子高齢化による深刻な人手不足を背景に、いよいよ、日本も外国人労働者の積極的な受け入れに踏み込むことになった。出入国管理法の改正(2018年12月8日、国会において「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立)により、「特定技能」という新しい在留資格をつくり、建設、介護など14業種において、幅広く外国人の労働を認めることになったのだ(2020年時点での詳細は、日本の「ダイバーシティ」社会に、外国人労働者は何をもたらすか?参照)。
ほかにも、近年では、再雇用制度や定年引上げによる高齢者の雇用拡大(労働力の確保)、また、LGBTに対する企業の理解や支援の広がりなども、働き手の多様性(ダイバーシティ)を考えるうえでの大きな流れになっている。もちろん、障がい者雇用の拡大も特筆に値する(2020年時点での詳細は、さまざまな障がい者の雇用で、それぞれの企業が得られる強み参照)。
2020年代――日本社会の「ダイバーシティ&インクルージョン」は、企業の成長戦略の一環として、そして、あらゆる人たちが一緒に働き、生産性を高める「働き方改革」の一側面として、いま新たな段階を迎えているのである。
※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2019」特集《ダイバーシティが日本を変える!》内のテキストを転載(一部加筆修正)したものです。
注)「オリイジン」の最新号は「オリイジン2020」です。