ささき・かをり
国際女性ビジネス会議実行委員会委員長。1983年上智大学外国語学部比較文化学科卒業。フリー通訳者として活躍後、87年ユニカルインターナショナル設立。同年より『ニュースステーション』リポーター。96年より毎夏「国際女性ビジネス会議」開催。2000年イー・ウーマン設立。安倍内閣では内閣府規制改革会議委員を務め、その他にも多くの政府審議会の委員を務める。2児の母。著書は『自分を予約する手帳術』(ダイヤモンド社)など多数。近著は『なぜ、時間管理のプロは健康なのか?』。

「ダイバーシティ」という言葉を聞いた事があるだろうか。初めて聞いた、という方もいれば、聞き飽きたという方もいるだろう。「また女性活用の話か」と敬遠する方もいるかもしれない。しかし私は、必ずしも「ダイバーシティ=女性活用ではない」ということを述べながら、本当のダイバーシティとはいったい、どういう意味なのかをここで考えていきたい。

 ダイバーシティは、とにかく大切なキーワードだ。これからの企業の成長に関わる点で重要であり、社会全体の成長に関わり、また、男女一人ひとりの働き方にも影響を与える概念なのである。だからもし既に聞いた事がある、学んだという知識や印象があったとしても、今一度脇においていただき、これから全8回連載で書く「実践ダイバーシティ」を、新しい頭と心で読み、考え、活用していただきたいと思う。

 ではさっそく、最初に単語の意味から考えてみよう。

海外では30年以上前から
意識されていた「ダイバーシティ」

「ダイバーシティ」とは日本語に翻訳すると「多様性」。たくさんのありさま、ということだ。地球環境で言えば、生物の多様性であり、植物多様性である。様々な「種」の生き物が共存している事をさす。動物の種類、昆虫の種類、花の種類等、多く共存することに意義がある。だから種の数が少なくなる事を防ぐために絶滅危惧種を保護するなどしながら、多様性を守って来ている。

 では、人間社会での多様性、ダイバーシティとは、いったい何を指すのだろうか。例えば国際社会の中で、ダイバーシティというと、通常は複数の国籍を指す。15歳になる私の息子は現在スイスに留学中だが、彼の学校教師と話をすると頻繁にダイバーシティという単語が出てくる。何十もの国籍の子どもたちが学んでいるということがいかに魅力であるかという意味で使っているわけだ。

 この場合のダイバーシティは、もちろん国籍を指しているが、それにとどまらず、生活スタイル、宗教、価値観なども多様である事を指している。いまや教育の過程でも、多様な価値観の中で考え、学ぶというダイバーシティは重要なキーワードなのである。