秋元:いま、デジタル化に関連して、さまざまなバズワード(定義や意味が曖昧な用語)が躍っています。IoTしかり、AI、ブロックチェーンしかりです。これらは要素技術であって、手段でしかありません。
三枝:やはりビジネスモデル・ドリブンで、やりたいことに対して、どうやってデジタルを使って早く正確に、より高精度に応えていくかが基点となるべきです。戦略を実現するための武器がデジタル化であり、さまざまな要素技術になります。
ブリヂストンは2015年、「品質宣言」を策定しました。従業員一人ひとりに求められているのが、「お客様を知る」「感度を上げる」「イノベーション&改善」「ルールを守る」の4項目。このループを回して、お客様志向で仕事を進めようということです。このループのスピード感をもう少し明確にしていくと、まさにデジタル・トランスフォーメーションの指針になるのでは、と考えています。
秋元:特に、ルールを守るというのが興味深いですね。トランスフォーメーションやイノベーションは、拙速に進めると無法地帯のようになりがちです。ルールに則って、小さく始めて大きく展開するやり方が望ましい。
三枝:チーム編成のあり方も課題ですね。多様性のあるメンバーで議論して、体制をどうやってつくっていくかが、目下の課題です。
秋元:従来の日本企業では、ファンクション別組織が多かった。KPMGもそうです。それで、私どもは、コンサルティング、監査、税務といったサービス別の部門を一つにしたチームを実験的につくってみました。というのも、税理士法人とコンサルティングは、これまで接点が多くはありませんでした。ところが、ある企業のサプライチェーンのプロジェクトで、コンサルティングが支援業務を行うと、税務、経理問題も大きく絡んでいるわけです。ですから、ワンファームとしてチームで対応するようにしました。
三枝:お客様にバリューを提供するには、必要な組織変革ですね。
デジタルを経営に活かす
CDOの役割が重要に
秋元:三枝さんはCDO(チーフ デジタル オフィサー)という肩書きをお持ちですが、どういう役割を担っているとお考えですか。
三枝:ソリューションビジネスを始め、これを拡大していく目的で、2017年1月に設けました。組織全体にデジタル化の改革や進め方を植え付けることが必要で、そうした役割を果たすべきと考えています。
秋元:私は、ビジネス戦略とIT戦略が同じ方向を向くようにする役割を担っていると考えています。テクノロジーの要素技術については、CTO(最高技術責任者)など専門の責任者がいるはずで、CDOは、そうした知見を持ちつつも、経営企画に近い形で判断・意思決定を行っていく存在といえます。企業としてのビジョンを明確にして、それに資するデジタル化を進める責任者を、経営に近い立場に設置することが重要です。
世界的に見れば、デジタル・トランスフォーメーションはすでに応用段階にあるといえます。日本企業は、あるものをうまく使う工夫や適応は得意ですから、強みを発揮するのは、これからだと期待しています。
- ●構成・まとめ|米田真理子 ●撮影|和田佳久