5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…#13Photo:Shannon Fagan/gettyimages

「日本の医療機器メーカーは生き延びることができるか」――。高収益企業がそろう日本の医療機器メーカーだが、冒頭の疑問が浮かぶほど医療機器を取り巻く環境は厳しくなっている。さまざまな逆風をはねのけ、業績を伸ばす医療機器メーカーはどこか。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#13では、変貌する医療機器セクターを分析しつつ、テルモ、オリンパス、シスメックスなど主力企業の戦略を解説。中長期で飛躍が期待できる企業と、現状のままでは厳しい企業についても具体名を挙げて詳述する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

環境変化に対応できないと
生き延びることができない時代に

「日本の医療機器メーカーは生き延びることができるか?」――。世界で高いシェアを獲得している商品を持つ企業がそろう医療機器セクターだが、5年後、10年後を展望すると環境は必ずしも明るくない。実際、主力企業の株価も2023年以降は日経平均株価を下回って推移している。

 日本の医療機器メーカーは2000年以降、世界的な市場拡大を背景に、業績が右肩上がりで、景気変動にも強かった。特に成長著しい中国市場を取り込めたことが大きい。

 だが、中国については日本と同じ安定成長の市場に変わりつつある。コロナ前、コロナ禍では医療機関不足から過剰投資が続いたことで、日本や欧米の医療機器メーカーは中国バブルを享受できたが、その時期は終了した。

 野村證券の森貴宏アナリストは「中国の市場拡大と円安という医療機器メーカーの業績と株価を押し上げてきた材料がなくなった。今後5年、10年という時間軸を考えると、事業環境の変化に対応できている会社しか生き残れない」と指摘する。

 米トランプ政権への対応も急ぐ必要がある。SMBC日興証券の徳本進之介シニアアナリストは今後の医療機器セクターの論点として、「米国の関税や規制への対応」「台頭する中国企業との競合」「資本効率を意識した非連続的な成長」の三つを挙げる。

「医療機器セクターは10年以上晴れマークが続いてきたが、成長市場であった中国では画像診断機器や検査診断機器は曇り後雨マークに変化、治療機器も青空に雲が出てきている」(徳本氏)

 果たして日本の医療機器メーカーは生き延びることができるのか。次ページでは厳しい環境の中でも変化に対応しながら2桁成長が継続しそうな企業や、このままでは沈みかねない企業について具体名を挙げて詳述。躍進が期待できる中堅企業や、給料が伸びる企業の条件についても解説する。

図表:医療機器5年後