国際税務のノウハウを
組織として活用するために
社内にも法務や税務の担当者がいますが、国際税務、ましてやクロスボーダーM&Aの税務となると、どうでしょう。
一概に言えませんが、税務の専門部署を抱えている日本企業は少ないと思います。多くの場合、経理・財務部の一業務になっているのが実情でしょう。しかも、日本企業の場合、ローテーションがあるので、スペシャリストが育ちにくい。実際、国際税務に精通したベテラン社員がいるところは極めて稀です。
通常、M&Aを検討している当該事業部のメンバーを中心に、プロジェクトチームが組まれることが多いと思います。その際、経営企画部や経理・財務部などから、税務に明るい人が加わることもありますが、M&Aの税務に精通しているわけではありません。
タックスマネジメント次第で買収により得られるリターンは大きく変動しますか。
可能性はあります。買収に当たっては、仮説を立て、課税を考慮し、事業計画やキャッシュフローモデルを作成しますが、我々がアドバイザーで入った場合、課税関係の前提が合理的かどうか、無用な税金を支払うことはないかなどをチェックして、事業計画やキャッシュフローモデルの作成をサポートします。
日本企業をご覧になって、クロスボーダーM&Aの国際税務への感度はどうでしょう。
歴史も相対的に浅く、それゆえ経験値も低いので、それほど高いとは言いがたいですね。
某日系グローバル企業のCFOから、こんな話を聞きました。いわく「M&Aは当該事業部が担当しているが、税務については外部の専門家に依頼して、案件ごとに最適化を図っている。とはいえ、グループ全体として税務が最適化されているかどうか、それを監督・統括できる人がいない。部門間で知識やノウハウを共有する必要もあり、タックスマネジメントの観点から横串を通せる組織が必要だ」
実は、そのような先駆的な組織体制を整えている企業は存在します。あるいは、我々のようなプロフェッショナル組織を、あたかも自社の税務部門のように活用しているところもあります。
このような対応は、費用対効果などを考えると現実的とはいえない場合もあると思いますが、国ごとで税制や実務は異なりますし、しかも毎年改正されるため常にアップデートが必要です。専任の担当者を置いても、とても対応し切れるものではありません。
税務知識だけでなく、こうした組織的な問題も相まって、クロスボーダーM&Aにおけるタックスマネジメントはおざなりにされてきたのかもしれません。繰り返しますが、対策を講じるか否かで、バリュエーションは大きく変わってしまう可能性があります。
また、とりわけM&Aというプロジェクトは、限られた情報を限られた人たちの中で共有し、短時間のうちに意思決定しなければならない局面も多いですから、スピード感を持って動ける体制も必要です。そのためにも、我々のような外部のグローバルプロフェッショナルファームを、上手に活用していただきたい。
- ●企画・制作:ダイヤモンドクォータリー編集部
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