これからますます、あらゆる人がかたちづくる日本の社会

 また、日常生活において何らかの不自由があるという点で、要介護者も社会の「多様性」をかたちづくる層と位置づけられるだろう。一定以上の要介護認定を受けている人は、税法上「障害者控除」の対象にもなっている。

 障がい者は総人口の6~7%と言われており、要介護者は総人口の5%程度。単純に両方を合計すると日本人の10人に1人は、生活上で何らかの不自由を抱えていることになる。身内に障がい者や要介護者がいる人は、日本人全体の半分を超えるのではないだろうか。

 LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の存在も忘れてはならない。およそ10年前である2010年以前は、この言葉も存在もあまり意識されてこなかったが、LGBTと称される人は総人口の約8%いると言われている。データ元となるアンケート調査の内容や定義によってこの数値は異なるものの、学校の1クラスが30人とすれば、周囲の者が認識しているかどうかは別として、複数人はLGBTに該当する可能性がある。

 さらに健康面で言えば、日本人の寿命が伸びるにつれ、2018年で100万人を超えるがん患者がおり、がん患者の3人に1人は治療をしながら働いているとされる(国立がん研究センター推定)。

 現在、自分は「社会における多数派」と思っていても、いつ少数派になるかは分からない。マジョリティ/マイノリティという区分自体がダイバーシティ社会の中ではもはやナンセンスなのかもしれない。

 こうして、数字とともに周囲を見渡してみれば、日本の社会がさまざまな人によって形成され、「ダイバーシティ&インクルージョン」が着実に進んでいることに気づくだろう。

※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2019」特集《ダイバーシティが日本を変える!》内のテキストを転載(一部加筆修正)したものです。
注)「オリイジン」の最新号は「オリイジン2020」です。