答えが1つとは限らない算数の設問
現在、明星小学校の校長を務める細水保宏先生は、横浜市の公立小学校から筑波大学附属小学校へと移り、副校長を務めながらも算数の教員として40年間、算数好きの子どもを増やすために力を注いできた。教員向けの算数の授業の進め方に関する著作も多数あり、算数教育の第一人者といっていい。新型コロナ禍の影響でこの3カ月間は控えめだったが、週末には算数関連イベントなどで全国各地を飛び回っている。
この多忙を極める細水先生がいま力を入れているイベントの1つに、「探究オリンピック」がある。これは別名「STEAMの祭典」と銘打たれた、3年生以上の小学生を対象とした思考力を問うコンテストである。ちなみにSTEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を取った造語だがArtにLiberal Arts(リベラル・アーツ)を加えてArtsと表記する場合もある。
小学校では2020年から本格実施となった新しい学習指導要領では、算数の教え方もこれまでのものとはずいぶん異なるものになっている。親世代が受けてきた授業では、計算問題などが出て、指名された児童が答えをいうと、「正解」「惜しいな(不正解)」といった具合に、明確な1つの答えを問うものが主流だった。
ところが新しい教え方では、必ずしも答えは1つとは限らない設問で、なぜそうなるのかを算数的な思考力を駆使して、自分の意見として答える学び方が取り入れられている。従来のような「正解」を追うようなものだと、当たればそこで児童の思考は止まるが、新しい学びではお互いの考え方を話し合うという一段高度な学び方に衣替えしているのだ。
それはどのようなものか。具体的に細水先生と見ていきたい。