コロナ禍で普及したリモートワークは、これまでオフィスにおいて発揮されてきた“人を率いるための技術”のいくつかを無効化してしまうかもしれない。
圧倒的なオーラを放っていた経営者も
ウェブ会議ではぺらぺらの存在に!?
たとえば、こんな経営者や役員を誰もがきっと見たことがあるに違いない。
だだっぴろい応接室と風格ある調度品で威圧し、後光が差すかのように採光を工夫したデスクを前に革張りの椅子にどっしり腰掛け、英国製だかイタリア製だかのつやのある生地のオーダーメードのスーツに身を包み、パワフルな印象を与える派手なネクタイで大物感を醸成し、もったいぶった身ぶりを交え、鳴りの良いバリトンボイスで終始ゆっくり賢者然と自説を述べる。会議ではあえて全員がそろってから登場し、抽象的で中身はないが、一聴するだけなら、さも意味の深そうな言辞を駆使した挨拶で魅了する。
これまでは、権力者のこんな立ち居振る舞いにだまされてきたのではないか(というか、われわれはこういった“雰囲気”にだまされやすい)。
しかし、実物に接することなく、ウェブ会議アプリの等分割されたフレームに、他者と同じ扱いで顔が並べられ、話した言葉が即、文字起こし機能によってその場でストリーミングされるようになると、これまでいかにも立派に見えていた人は、画面に映し出された二次元そのままに、ぺらぺらの俗物であることが明々白々になるかもしれない。