中原 面接ではどのような話を聞いているのですか?

有沢 一人ひとりの社員がどのようなキャリアを歩みたいと考えているのか、その実現のためにはどんな障害がありそうかなど、彼らのニーズや置かれている状況をこと細かにヒアリングしてもらっています。また、弊社では現在、年2回、部門をまたいだ異動や勤務地変更の希望が出せる自己申告制度を運用しており、希望している社員に対してはその動機なども聞いています。仕事上の悩みや心配ごとがあれば、相談に乗ってあげることもあります。

中原 ヒアリングした情報は、本社人事や経営陣とも共有しているんですよね?

有沢 もちろんです。月1回、HRBPの3人と人事部長と私とで会議をして、その情報は経営にも上げています。

中原 一人ひとりの社員に対するキャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーのような役割を担っているわけですね。一方で、それぞれの社員の直属の上司や各部門長との関係はどうなのですか?

有沢 各支店や工場の社員から聞いた話は、コンフィデンシャルな内容でなければ、基本的に支店長や工場長、部門長などとも共有しています。ですので、HRBPが現場に介入しているといったネガティブなイメージは持たれていないと思います。むしろ、支店長や工場長が忙しくて把握しきれていないことをHRBPが聞き出して共有してくれるので、現場をマネージメントするうえで助かっている、という声をよく聞きます。

中原 HRBPが個々の社員の人事評価に関与することはありますか?

有沢 評価は原則、現場の上長の権限と責任で行ってもらっています。そのため、HRBPがオーバージャッジして、評価自体に関与することはありません。ただ、弊社ではすべての社員が自分のKPI(業績評価指標)シートに基づいた定量評価を行っていて、その項目を作るときにHRBPがサポートすることはあります。

中原 社員の異動や昇格には関わっているのですか?

有沢 異動や昇格は、人材開発委員会という人事に関する最高意思決定機関があり、その委員会で各本部から上がってきた異動案や昇格案を検討・承認する体制を採っています。HRBPの3人には、異動・昇格案がある程度まとまった段階で必要に応じて目を通してもらい、意見やアドバイスをもらっています。

 そのとき、たとえばある社員の異動案に対して、HRBPから「このタイミングで異動させるのはよくない。なぜならば……」という反対意見が出ることもあります。つまり、異動や昇格に関して、直接的に関与しているわけではありませんが、意見を述べる権限はあり、影響力は大きいと言えます。

 HRBPを人事部長と同格にして、CHOである私の下に置いているのも、社員の異動や昇格に対して一定の権限を持って意見をしてもらうためでもあるのです。