巨人復権 大NTTの野心#5Photo by Reiji Murai

NTTの有利子負債が12兆円を超える見通しだ。NTTドコモの完全子会社化をきっかけに先行投資を加速させており、NTTデータグループの完全子会社化で、さらに借金が膨らむ。特集『巨人復権 大NTTの野心』の#5では、財務を健全化する路線から“積極財政”に転換したNTTが狙う次の巨額投資に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

財務の健全化より「投資拡大」を優先
有利子負債が過去最大の水準に膨らんだ全経緯

 堅実とみられてきたNTTの財務が悪化している。

 NTTは7月10日、総額177億ドル(約2兆6000億円)の外貨建て社債を発行すると発表した。総額2兆3700億円で実施するNTTデータグループ(データG)の完全子会社化に充てる計画で、銀行から借り入れた短期資金を借り換える。

 米ドルとユーロ建て社債で、日系企業として過去最大の外債発行となった。これによりNTTの有利子負債は12兆円を超える見通しだ。2020年にNTTドコモを完全子会社化して以降、NTTは成長投資を加速させており、借金を増やし続けている。

 NTTはドコモの完全子会社化で年間7000億~8000億円の配当収入を吸い上げてきたが、そこで確保した資金は有利子負債の返済に充てず、ほぼ全額を株主還元に回した。その結果、成長投資に必要な資金のほとんどは借金で調達してきた。

 これによりNTTの有利子負債は過去最大の水準に膨れ上がったが、それでも同社は巨額投資を続ける姿勢を崩していない。

 次ページでは、NTTが財務健全化の方針から“積極財政”に転じた経緯と共に、NTTドコモ、データGに続く、次なる巨額投資先に迫る。NTTは、有利子負債をどこまで増やそうとしているのか。