5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…#18
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投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#18では、自動車業界36社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

企業の「理論配当額」を独自推計
それよりも高配当の自動車企業は?

 投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。

 一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。

 では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。

 この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、いわば「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。

 一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」とも見ることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。

 では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、輸送用機器を含めた自動車業界の36社のランキングをお届けする。

 自動車業界は、トランプ関税や電動化をはじめとする巨額投資などの不透明感から、市場での評価が決して高くなく、PER(株価収益率)は低迷している。一方、かねてトヨタ自動車やホンダらが1兆円を超える自社株買いの実施方針を表明するなど、積極的な還元姿勢を見せる大手企業も多い。

 今回のランキングを見ると、トップに君臨した企業は何と理論値を2500億円も上回る“大盤振る舞い”の配当を行っていることが判明。また、理論値を100億円上回る企業が6社登場した。

 ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。次ページで、その結果を見ていこう。