“医職住”の支援をワンストップで行える強み
清澤氏が行う“医療型就労支援”では、1年後の職場定着率も極めて高い数字になっている(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査では、就労した精神障がい者の1年後の職場定着率が49.3%。清澤氏が行う医療型就労支援は93.8%)。それはなぜか。
「国が定める就労定着支援事業と違い、現在、 “医療型就労支援”での定着支援は期限がありません。就労者が患者さんである限り、わたしたちの病院に通い続けますから、その間はずっと支援を続けていけます。つまり、医療的な側面、就労と定着支援の側面、生活支援の“医職住”をワンストップで行えることが強みとなって、定着率を高めていると考えられます。障がい者の就労支援、定着支援では、この医職住を網羅した支援がとても重要になります。また、就労してから働き続けていくための土台作りを行っていること、企業側へ雇用定着のためのベースとなる雇用システムの提供を行っていることも高い定着率を保っている要因のひとつとなります」
福祉法人・NPO法人・民間企業といった就労移行支援機関も、地域の医療機関との連携を図ってはいるが……。
「従来型の就労移行支援は、いろいろな機関がひとりの障がい者を支えています。このことはとても大切なことであると思います。しかし、情報を一本化するのが難しく、対応が段階的になってしまい、連携による意思統一がなかなか図れなかったり、時間がかかりすぎることがあります。また、責任が分散されることによって、企業におけるリスク発生時の対応が円滑に機能しない場合も多いです。一方で、医療機関の職員は、精神科医師・看護師・心理療法士など、すべて異なった国家資格を持つ専門家集団であり、それぞれの専門性を生かし、チーム一体で障がい者と企業を多面的にフォローしています。リスクの早期発見と発生時の対応だけでなく、情報の共有や統一した支援が行いやすいのです」
従来の就労移行支援事業所が行っている“職業訓練”を、清澤氏の“医療型就労支援”はほとんど行っていないのも特徴だ。
「職業訓練はOJTで行った方が効果的だと思っていますし、わたしたちが職業訓練を行うと、地域の就労移行支援機関と競合してしまう。それでは差別化が図れないということもあり、“医療型就労支援”では、病状管理やストレス対処、症状が悪化しそうなときのサインの出し方を本人に徹底的に教えて、自身で対応できるように育成しています。これらは就労して働き続けるための土台作りです。そして、このプログラムに参加することで自然とストレス耐性が身につくようになります。これまで、わたしは、(中小企業~大企業の)3000社ほどの方、それこそ現場レベルから取締役レベルの方とお会いしていますが、そこでよく言われるのは、『会社は(障がい者に)仕事を教えられるけど、症状とどう付き合えば良いのか?は教えられない。だから、支援機関でその部分をやってくれないか?』ということです」