中原 人事経験がまったくのゼロでも、HRBPが務まるものなのですか?
有沢 まったく問題ありません。むしろ人事経験があると、どうしても人事的な視点から現場を見てしまうし、社員たちと話をするときも人事の専門的なテクニカルワードを使ってしまい、なかなか共感を得られません。
大事なことはやはり、現場の視点で現場を見ることです。現場の苦労を聞いて理解・共感できる人、現場の社員たちから尊敬される人にHRBPをやってもらったほうが、現場からの信頼を得られます。信頼は、HRBPが業務を進めていくうえで不可欠な要素です。
中原 支店長や工場長など現場のマネージャークラスの人たちにとっては、HRBPは「現場経験は自分以上」ということになりますよね。やりにくかったりはしないでしょうか?
有沢 支店長や工場長には部下をマネージメントする立場なりの悩みや不安があり、HRBPはそうした相談にも乗ることができるし、必要があればトップにも物申してくれることを、現場の社員たちはわかっています。ですので、支店長や工場長からすれば「良き先輩」「良き兄貴分」のような存在になっています。
実際、何か問題が起こったとき、内容によっては、本部長など部門の直属の上司ではなく、HRBPを頼りにするというケースもあります。
中原 現場のマネージャーとしては、本部長とHRBPという二方向に相談できるルートがあるのは心強いですね。
有沢 直属の上司だけではなく、HRBPがニュートラルな立場で見てくれている環境であれば、安心して仕事に集中することができます。マネージャークラスも含めた現場の社員たちに対して、そうした心理的安全性を担保することも、実はHRBPの大切な仕事なんです。
中原 外資系の企業などではHRBPを社外からリクルートするケースもありますが、カゴメの場合は3人ともがプロパーですよね。
有沢 個人的には、社外からHRBPを招くのは難しいと思っています。先ほどの「現場経験」の話とも通じますが、やはりその会社や担当する部門のことが詳しくわかっていなければ、慣れるまでに時間がかかりますし、現場の社員たちからは「わかってない人に言われたくない」と反感を抱かれるかもしれません。
いま、うちでHRBPをやってくれている3人はプロパーですし、現場経験も申し分ありません。担当する事業部門のことを、その歴史も含めて、ちゃんと理解しています。将来的にはさらに大きなポジションについてもらいたいと考えている人材です。
HRBPを選ぶときには、慎重に慎重を重ねて「この人であれば、現場から信頼されて、経営にも物申すことができるだろう」という人を選ばなければならないと思います。