制度の導入は
トップダウンで
中原 HRBPとなったご本人たちも当初は戸惑いがあったのでは? それぞれの事業部門でずっとキャリアを積んでいたのに、いきなり「人事をやれ」と言われたわけですから。
有沢 ええ。3人とも最初は「この年齢で人事に来て、自分は何をやればいいの?」という反応でした。
けれど、当時の寺田直行社長から直々に、人材育成はこれからのカゴメの最重要課題であること、人事の経験は今後のキャリアパスの中で必ず生きること、などの話をしてもらい、HRBPの役割や重要性について腹落ちしたようです。そのあとの動きは速く、3人ともすぐにキャリアコンサルタントの国家資格を取得し、1人は産業カウンセラーの資格も取りました。
中原 有沢さんからHRBPの3人に対して細かな指示を出したりすることはあるんですか?
有沢 相談を受けることはありますが、基本的には任せています。私としては、彼らの動きを従来の人事の仕組みや常識で縛りたくはなくて、彼らがもともと備えているコミュニケーション能力やキャラクターを大事にしてほしいと考えています。
カゴメでHRBPを導入するのは初めての試みでしたので、彼ら自身がモデルケースになれるように自由に動いてもらい、何か不都合が生じた場合のみ改善するというスタンスを採っています。とはいえ、3人とも問題解決能力がきわめて高いので、たいていのことは自分たちで判断して解決していますね。
中原 逆に、そんな優秀な方を各部門から人事に引き抜いて、部門から苦情を言われたりはしなかったのですか?
有沢 かなりありましたね。「人事はいったい何を考えているんだ」と。
中原 そうした反発を、どのように説得したのでしょう?
有沢 そこは先ほどの3人の説得と同じで、社長(当時)の寺田に動いてもらいました。HRBPのような新しい人事制度を導入し、全社に浸透させていくには、トップダウンでやっていくことが不可欠です。そのため、HRBPの導入を含めた人事改革は、人事だけの問題ではなく、全社的な経営マターなんだという明確なメッセージを、寺田から全社員に向けて発信してもらいました。そのおかげでスムーズに導入を進めることができたんです。