一見すると“優しい企業”の行いもマイナスに

 障がいのある方に支払われる賃金(労働契約・労働協約・就業規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支払われる給与)について、紺野さんはどうお考えですか?

 「障がい者から出る不満のひとつとして『給料が安い』というのがあります。この不満は、理由が分からないのが一番の原因です。基準が明確ではないので、『障がい者だから安くされている』と考えてしまうのです。これが達成できたら給料アップ、このスキルを身に着ければ新しい役職に就くなどと明示することです。前にお話したクリーニング工場では『1級ボイラー技士の資格を取得したら正社員』という目標を設定し、脳性まひで生まれつき手足の動きや発語に障がいがあった男性が、1級ボイラー技士の資格試験に一発合格しました」

 障がい者の雇用にあたっては、企業側の明確な「意思」が必要なのですね。

 「障がい者雇用の開始を、まずはトップが決めることです。法定雇用率を達成している企業の割合は48.0%(2019年6月現在/厚生労働省発表)。『社会の一員として責任をしっかり果たす』と社内に発信するのもよいでしょう。また、ある企業の経営者は『障がい者を雇用し、立派な納税者に育てていくことが私に与えられたミッション』と言います。障がい者を特別扱いしないことも重要です。たとえば、定期的な通院の必要がある障がい者に有給の特別休暇を与えている企業があります。一見すると“優しい企業”に思えますが、健常者から『なぜ、あの人だけ特別な休暇があるのか?』と不満が出てくることがあります。この場合、会社全体の制度を見直すのがポイントです。時間単位の有給取得を可能としたり、フレックスタイムを導入したりすると、障がいのない従業員も働きやすい職場となります」