大人たちから子どもまでのみんなの「学びの広場」

 在留外国人をサポートする黄瀬さんたちの動きは早く、翌2016年の5月には日本語学習広場「かみやんど」がスタート。月曜日の夜7時からだった。

 「仕事帰りに続々とみんながやってきました。新聞から旬のニュースを選び、大きくコピーして、ふりがなをつけて、一文字一文字確認しながら読み合いました。そして、書いてある内容について自分たちの思いを交えながら学び合ったのです」

 在留外国人が日本で暮らすときに最大の壁になるのが「言語コミュニケーション」だ。話すこと・聞き取ることはできても、日本語の読み書きができない外国人は多い。学び直しと学びつくりの場である「かみやんど」は、そうした人たちの望むべき空間であり、黄瀬さんの話から、「かみやんど」が、「教える」という一方通行の「教室」ではなく、コミュニケーションの「広場」であることが分かる。「広場」は、週2回開かれるようになった。

日本語学習広場「かみやんど」が生む多文化共生日本語学習広場「かみやんど」では、あらゆる人がひとつのテーブルでサポートし合っている 写真提供:かみやんど

 「基本的に、月曜日は新聞記事の読み合わせ、水曜日はN2(日本語検定2級)を目指して問題集をもとに学んでいます。それ以外に自分のレベルに合わせて学習している人もいたり、小・中学校の子どもたちが学校の宿題をしにやってきたりします。高校で社会科を教えておられた元教師の方が新聞の読み合わせを担当、私立高校で留学生に日本語を指導されている講師の方に日本語検定の学習を担当していただいています。私は、主にそれ以外の学習を希望される人の対応です。現役の小学校の先生も時間の空いているときに応援に来てくださっています。日本語のレベルは一人一人違います。新聞記事を読み合う時間でも、記事の内容について語り合える人の横で、文の中の『てにをは』に注目している人や、初めて耳にする言葉の意味を知りたいと思う人などさまざまです。あらゆる人がひとつのテーブルでサポートし合い、学んでいます」

 土地柄、南米日系人が多く、最近ではベトナムの人なども「かみやんど」にやってくるという。残業や夜勤仕事で時間が合わず、数カ月ぶりに訪れる人もいる。出席をとることはなく、決まった座席もなく、いつでも誰でも参加できる環境で、家族での参加も多い。大人が日本語の勉強をしている横で、子どもたちが学校の宿題をする――まさに、みんなの「学びの広場」なのだ。