「似ている」を排除していけば
いつかは「似ていない」ものになる
また、最近の打ち合わせでは、「海外にこんな事例がありまして」とか「ネットではこれが流行っていて」と話し始める人が多い。
しかも別件の打ち合わせに行っても、他の人から同じ事例の話を聞くことがよくある。
世の中の情報量が多くなり、多様性が増えると思いきや、実際は「俺はこれを知ってるよ」と流行っていることを語りたがる人が増えた印象はないでしょうか。
「面白い・面白くない」を自分で判断するのは難しいから、つい事例で語りたくなるのかもしれません。
だとしたら、事例に頼るよりも、自分で判断できるレベルの基準を持つ方が得策なはずです。「似ている・似ていない」の判断なら誰にでもできそう。
スイカの種を取るように、ルーズにならずコツコツと「似ている」を排除していけば、誰でもいつかは、誰にも似ていないもの、を作れるのではないか。
簡単すぎて当たり前のようですが、誰にも似ていないもの、というゴールは間違ってないですよね。
人が何かを「当たり前のこと」と無視する時は、本能的に、それを「真実」として向き合うと面倒なことをするハメになるぞ、と心が逃げているのかもしれません。
きっとみんな「コツコツと」という言葉が嫌いなのだと思うんです。
「コツコツ」は嫌い、「コツ」が好き。だってクリエイティブは閃くものだから。
しかし閃こうとしてもグルグル回るばかりになり、結局効率が悪いのです。僕の30年の経験からこれだけは言い切れる。
以前、参加した投資セミナーで「粛々と」という言葉が僕のツボに入ってしまったのは、「コツコツと」を「粛々と」に言い換えることで、「コツコツ」がカッコよく見えたからではないかなあ。ここに来てそう思ったのでした。
1968年、広島県生まれ。東京大学農学部卒。博報堂クリエイティブディレクター/CMプラナー。
主な作品に、日本コカ・コーラ「ファンタ」=ACC賞グランプリ2005受賞、U H A味覚糖「さけるグミ」=ACC賞グランプリ・カンヌライオンズフィルム部門シルバー・TCC賞グランプリ2018受賞、森永製菓「ハイチュウ」、永谷園「Jリーグカレー」、コンデナストジャパン「GQ Japan」、エムティーアイ「ルナルナ」、福島県「TOKIOは言うぞ」など。コミカルで独自の世界観を持つ作風で知られる。宣伝会議コピーライター養成講座の講師も務める。著書に『面白いって何なんすか!?問題』(ダイヤモンド社)。