ソフトバンク、NTTデータ、三井不動産などの社員研修で続々と採用されている「idea Picnic(アイディアピクニック)」というアイデア発想法プログラムを書籍化した『アイデアのスイッチ!』(ダイヤモンド社)が好評だ。「idea Picnic」の考案者はAIベンチャーを設立した中沢剛さん。戦略コンサルタントとして働いていた頃に考え出し、ソフトバンク在職中に同社の社内研修の人気プログラムとなった。現在、このプログラムは企業・学校へと広がり始めている。今回、中沢さんの戦略コンサルタント時代の上司で、「idea Picnic」の成立に大きくかかわったNTTデータの風間昭男さんとの対談が実現した。なぜ、「idea Picnic」を実践すれば、誰でもユニークなアイデアを大量に生み出すことができるのか? その秘密に迫る。(聞き手・構成/小嶋優子)

たくさんの「不満」を出すから「分析観点」が増える

 簡単な4つのステップでユニークなアイディアが生まれる「idea Picnic」(下図参照)。前回は、その誕生の背景と要点についてうかがった。今回は、なぜたくさんのアイデアが生まれるのか、その「仕掛け」について聞いてみよう。

中沢剛
東京大学文学部卒業後(株)NTTデータに入社。エンジニアを経て戦略コンサルタントに。さまざまな企業の戦略立案にかかわる中で、クライアントの課題を解決するアイデアを大量に生み出す方法「idea Picnic」を開発した。孫正義社長の後継者育成機関「ソフトバンクアカデミア」外部1期生。その後、ソフトバンクに転職して、社長室マネジャーを務める。現在は、(株)UsideUを創業し、ロボットを通じて対話業務を行う「コラボロイド」のサービス開発を手がける。著書に『アイデアのスイッチ!』(ダイヤモンド社)。

――前回、「『いい問い』を作ることをナビゲートするのがアイディア・ピクニック」というお話がありました。もう少し詳しくうかがえますか?

中沢 前回もお話ししましたが、カウンセリングやコーチングでは、「いい質問」をされるとそれに答える中で考えや気持ちが自然に整理されます。それと同じように、解決すべき課題も、「いい質問」に答える中でアイデアが生まれてくるのです。

 その「いい質問」を作るナビゲートをしているのが「idea Picnic」です。前半のステップ1~3でいい質問を作る。そして後半のステップ4で、その質問を自分自身に問いかけます。

風間 そうですね。たとえば、超優秀なファシリテーターがいるとブレストは盛り上がりますよね。でも、超優秀なファシリテーターなんて、なかなかいない(笑)。そこで、その超優秀なファシリテーターのエッセンスを吸収して、「◯◯するにはどうしたらいい?」「それってどういうこと?」と、自問自答して自分の中で成立させるのが「idea Picnic」ですね。

――では、各ステップのエッセンスをうかがいたいと思います。前半のステップ1は「フラグを立てる」。「◯◯したいのにできてない」という言葉で課題を設定します。そしてステップ2の「ネガ出し」で、その課題に対して「だって■■なんだもん」「××だから無理!」など、不満や言い訳を言いまくるのですね。

中沢 そうです。最初に課題を設定して、それに対して不満をたくさん出します。不満や言い訳を言うことから入るので、ハードルが低くて入りやすい。文句なら誰でも言えますから(笑)。

 そして、たくさん不満を出すということは、問題解決の観点が増える、ということです。たとえば、「朝ごはんを食べたいのに食べられてない」という問題に対して、「朝は時間がないから」「お金がないから」「作るのが面倒くさいから」とか、いくらでも不満は言えますよが、これは「時間」「金銭」「手間」という分析観点になっているわけです。分析観点が多ければ多いほど、解決のためのアイデアもたくさん出ます。

風間 マツコ・デラックスさんは切り口をつくるのが上手ですよね? 普通はちょっと思いつかないような「不満」を口にして、「ほら、こんなにひどいじゃない?」と視聴者に呼びかけて、「あ、ほんとだ!」「そうそう、それが言いたかったんだ!」というものすごい共感を生んでいる。それって、難しく言うと、マツコさんが、面白い「着眼点」「分析観点」を出しているってことだと思うんです。

中沢 そうですね。マツコさんは、鋭いですよね。でも、きっと、誰だって、その人なりの「不満」はあって、それを出せば、いろんな「分析観点」が手に入るはずなんですよ。

――なるほど。仮に出版業界を例にあげてステップ1と2をやってみると、「フラグ」が「もっと本を売りたいのに売れてない」。それに対する「ネガ出し」は、「本、重いじゃん」「書店、遠くて買いに行くのかったるいじゃん」「本の値段、高いじゃん」「難しいじゃん」といった不満や言い訳をたくさん出すということですね。

中沢 そうですね。そのネガ出しがたくさんあればあるほど、アイデアがたくさん生まれると思います。