話を本題に戻そう。淡路島への異動という新しいイニシアチブに直面して、当初は、一般に、牽引志向の強い人は、そこに新しいチャレンジの可能性を見いだしたり(目標達成)、ユニークさを重視したり(自律裁量)、責任を果たせること(地位権限)に、自分のモチベーションファクターを刺激されて、賛同するに違いない。

 一方、現在の東京にいるメンバーのとの連携(他者協調)、新たなリスク(安定保障)、家庭環境などとの兼ね合い(公私調和)の観点から、調和志向の強い人は懸念を覚えるだろう。牽引志向と調和志向の人は半々なので、そうした思いが顕在化しているか否かは別として、この理論から言えば、約半数の人は「淡路島への本社機能移転」という事象に際して懸念を覚えていると見ることができる。

 また、これは異動が打ち出された当初の状況だが、順次、異動が進んでくると、モチベーションファクターに変化が表れる。現状との対比で他者協調、安定保障、公私調和を捉えていた調和志向の人が、今度は、淡路島への異動者との間の他者協調、安定保障、公私調和を考え始めるからだ。

 つまり、異動が進むにつれて調和志向の人に、淡路島への異動者との間で連携したい、東京に残るリスクを回避したい、異動者との調和を図りたいというモチベーションファクターが刺激され始めるので、全体の2分の1の牽引志向の人に加えて、調和志向の何割かの人が異動に賛同することが予想される。このように考えると、1800人中1200人、全体の3分の2を対象とするという戦略は、モチベーションファクターの観点からも理にかなっているように思える。

環境変化に備えて
バックアッププランを用意すべきだ

 大事なことは、自分のモチベーションファクターに照らして、どう考えても合致しないイニシアチブに、自分のモチベーションファクターを無視したり、見ないふりをしたり、ねじまげたりして、付き合う必要はないということだ。

 自分のモチベーションファクターに合致しない異動に従っても、モチベーションが上がらず、パフォーマンスが高まらず、逆にストレスが高じて、自己実現ができないことは目に見えている。

 異動の打診に従わなければ、不利益を被るのではないかと心配する人もいるだろう。そのおそれがある場合は、不利益の度合いと、モチベーションファクターの不一致の度合いの差を見極めることがよい。どちらか大きい方を考慮して判断することが、おすすめだ。