「嫌なら転職すればいい」は
正しいのか?
「会社が嫌ならさっさと辞めて転職すればよい」といった主張を見かけることが増えました。その話の文脈として多いのが、入社した後にいわゆるブラック企業だとわかった、あるいは本当に自分には見込みがないことがわかった、といったものです。
確かに心身を壊してしまうような職場なら、早々に撤退するのが自分のためです。入社してはじめてその会社が抱える大きな問題を知り、前向きな転身を考えたほうがよいケースもあるでしょう。ただし、「会社が嫌」の内容が軽いのに「転職すればよい」と考え、短期間ですぐ転職してしまうのは問題があります。やがてジョブホッパー化してしまい、きちんとキャリアを形成できない恐れがあるからです。
たとえ好きなことを仕事にした人であっても、おそらく数ヵ月に1度は嫌なことが発生すると思います。なかなか成果があがらない。顧客からクレームを受けた。上司や同僚と意見が対立した等々。そのたびに転職を考えていたら、一生ジョブホッピングすることになってしまいます。
男女関係に置き換えて考えてみるとわかりやすいでしょう。好きな相手と一緒になっても、ずっと生活していれば嫌な面が目に入る機会はあるだろうし、ケンカになってしまうこともあるはずです。でも、そのたびに「離婚する」と言っていたらキリがないし、逆にそうした経験を乗り越えるごとにお互いの理解が深まり、2人の関係が強まっていくわけです。
仕事も同様で、嫌なことやトラブルをクリアしていくことで実力をつけ、仕事ができるようになっていきます。見方を変えれば、嫌なことやトラブルは自分の力を磨く機会であるともいえます。それなのにちょっとつまずいただけで「嫌だから辞める」と言っていたら、みすみす自分を成長させる機会を逃すことになります。