筋トレPhoto:PIXTA

 思うように気晴らしができない日々が続き、心の調子は下向き加減。そんなときこそお勧めしたいのが「レジスタンス運動(以下、筋トレ)」である。

 運動が抑うつ症状を軽減し、予防に働くことはよく知られている。ただ、ウオーキングやジョギングなど有酸素運動に偏る報告が多く、筋トレとの関係はあまり注目されてこなかった。

 ポルトガル・リスボン大学の研究者らは、うつ病もしくは抑うつ状態と筋力(マッスル・ストレングス)の関係を調べた423本の調査研究から、日本の研究を含む良質の21本を選び総合的に解析。最終的に26カ国、8万7508人(18歳以上の成人)のデータが対象となった。

 その結果、筋力は「身体活動の量」とは関係なく、単独で抑うつ状態のリスクを低下させ、有意に抑うつ症状を軽減させることがわかった。つまり、健康な人は筋トレに励み筋力アップを図ることで、精神的な落ち込みを防ぐ可能性がある一方、既に抑うつ症状に悩まされている人も、筋トレで気持ちが上向きになるわけだ。

 採用された日本の研究は40~79歳の地域住民4312人(平均年齢66.3歳、女性58.5%)が対象で、筋力は握力計で計測された(平均29.8kg)。

 握力の低値群(平均25.6kg)と高値群(平均35.5kg)で比較した結果、試験に参加した時点で既に抑うつ症状があった人の比率は、低値群で31.3%、高値群は25.8%だった。また、低値群の人たちは登録時に健康であっても、1年後に抑うつ症状が生じるリスクが明らかに高かった。

 うつ病の主な症状は(1)抑うつ気分(2)興味や楽しいといった感情の消失(3)体重の極端な増減(4)不眠、あるいは過眠などの睡眠障害だ。

 思い当たる節がある方は、発症予防に「自宅で筋トレ=宅トレ」を始めてみよう。最近は「宅トレ」用の動画がアップされているので飽きずに続けられる。

 SNSで仲間を募ってもいいだろう。自粛下のコミュニケーション不足にも効きそうだ。少なくとも「宅飲みニケーション」より家庭内の評判は良さそうである。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)