リアルなイベントが延期になっていくなかで…

 外国籍従業員のメンタルの変化や働き方に加え、コロナ禍で従業員全体に生じた変化を、ダイバーシティ推進の観点から西岡室長が言葉を続ける。

 「外国籍の方も日本人の従業員も、男性の育児休職がどっと増えました。里帰り出産をする予定だった奥さんが里帰りできないので、『上の子の面倒を自分が見るので休みます』といったふうに、コロナをきっかけに明らかな変化がありました。ダイバーシティ推進室としても、ちょうど今年(2020年)は男性の育児休職を増やすことを目標のひとつに置いていました。実は、コロナ禍の前から、お子さんの生まれた男性従業員とその上職者に、社長の井上が手紙を送っていました。印刷文面に直筆のサインをして、一人ひとりに。父親になった男性には『仕事を休んで育児をしっかりしなさい』、上職者には『部下に休みを取らせてあげなさい』といった内容です。結果的に、コロナが育休取得を後押しすることになりました」

 2015年の着任以来、西岡室長は社内コミュニケーションを深めるための仕組み作りを続けている。毎年11月の第3日曜日に開かれる「家族の日」もそのひとつだ。これは、個々の従業員がどのような仕事をしているかを自分の家族や他の従業員に知ってもらうイベントで、さまざまな人の相互理解(=ダイバーシティ&インクルージョン)を促進する社内行事である。

 「残念ながら、『家族の日』の今年の開催は厳しいですね。ここ数年、せっかく良い雰囲気で盛り上がってきたのですが、この状況で、たくさんの人を一堂に集めるイベントはできないので、その代わりに家族をテーマにした作文を募集しようという案もありましたが、子どもたちの夏休みも短くなったなかでそれも違うかな、と…イベントについてはいまのところ白紙状態です。でも、オンラインにするなり、何らかのかたちで続けたいですね。外国籍従業員と上司が参加する合宿型研修の『オフサイトミーティング』も今年は時期を動かさざるを得ません。こうした従業員間の交流はオンラインではなく、できるだけリアル(対面形式)で行いたいです。オンラインの研修プログラムを作って実施することはできますが、リアルなイベント(研修)が創り出す“チームとしての一体感”はかけがえないものですから」

コロナ禍が清水建設の「外国籍従業員」にもたらしたこと清水建設では、2017年から、外国籍従業員とその上司が参加する合宿型研修「オフサイトミーティング」を実施している。ワークショップや意見交換を通じて、お互いの仕事観などを理解していく 写真提供:清水建設(「オリイジン2020」より)