外国籍従業員のオンラインにおけるメリットとは?
清水建設において、日本人従業員と外国籍従業員の業務に特筆すべき区別はないものの、オンラインでの仕事では外国籍従業員ならではの苦労もあるようだ。
「リアルで対面しての会話ならニュアンスで伝わるものが、オンラインではうまく伝えられないことがあります。日本人は、『あれはどうした?』『それでいいんじゃない?』みたいな言い方をよくしますよね。でも、『いいんじゃない?』が、『やってもいいんじゃない』なのか、『やらなくてもいいんじゃない』なのか……イエス・ノーの表現がはっきりしている外国籍従業員には分からないケースがあります」
清水建設の従業員に限ったことではなく、外国人は日本人の曖昧な表現やあうんの呼吸がうまくくみ取れずにコミュニケーションに腐心することがある。一般的に、日本の企業では、イエス・ノーが明確な外国籍従業員のマネジメントを日本人管理職が四苦八苦することも見受けられるが…
「管理職の役割はとても重要ですね。表情の変化や身振り手振りが画面上でうまく伝えられないことは日本人同士でも起きていて、オンラインでのやりとりは、日本人が物事を正しく伝えることの練習になっていると思います。曖昧ではなく、きちんと表現することの価値を考え直す時期なのでしょう。黙っていても大丈夫だった会議も、オンラインではそうはいかず、『みんなが順番に発言しよう』『自分の言葉で伝えよう』と改めるようになっているので、むしろ、外国籍の従業員にとっては良い方向に進んでいるのではないでしょうか。みんなが発言しないので進み出た結果、以前は『自己主張が強い』なんて思われていた状況が、『いい意見を言うね!』というふうに変わっていく。もちろん、外国籍従業員にも日本人にも個人差はありますが、『特に(意見は)ありません』よりも、発言することが重んじられるのは、外国籍従業員にとってはメリットになるはずです」
清水建設の外国籍総合職の新卒採用は2010年から始まり、キャリア採用を含めると、現在、101人の従業員が全国各地で仕事を続けている。母国から離れて働く者にとって、世界規模での感染症の拡大は仕事を進めるうえでどのような影響があるだろう。
「自分の国に帰りたいときに帰れないことをみんながとても気にしています。コロナの前は、『(母国に)帰ろう』とそれほど頻繁に考えていなかったのに、こういう状況になって、『帰りたいときに帰れないのはどうすればいいんだ?』と悩んでいます。『(母国にいる)親の体調が悪くなったら…』といった強い不安感がありますね。親族が離れていても、国内の日本人なら何とかなりますが、外国人は難しい。渡航制限は外国籍の従業員にとって精神的にかなりきついようです」